行動経済学
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第10回大会プロシーディングス
競争選好と労働成果
山並 千佳
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キーワード: 競争選好, 年収, 労働意欲
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2017 年 9 巻 p. 110-113

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抄録

本稿では,競争への選好と労働成果の因果効果を明らかにする.選好や価値観といった行動を基礎づける要因と労働成果の関係を示す分析は少ない.そこで独自調査を実施し,過去に形成された個人の価値観や選好が現時点の労働意欲や賃金に影響を与えるのかを検証する.計量分析では,独自調査の設計により生育環境や居住地など価値観形成と労働成果にかかわる個人属性をできる限り落とさないように注意する.また,観察されない個人属性が真の因果効果を見えにくくする,すなわち競争選好が内生変数となる可能性を考慮するために操作変数による推定を行う.分析の結果,第一に,青年期に不況に直面した者は競争選好を持ちにくいことがわかる.また,競争選好を持たないことと年収には因果関係はないものの,労働意欲に対しては負の効果が確認される.不況期に育ち競争選好を持たなかった者は,就労期に労働意欲を失いやすいと言える.

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© 2017 行動経済学会
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