抄録
1996年から2005年までの10年間に東京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科専門外来を受診した声帯麻痺症例の中から,混合性喉頭麻痺を認めた症例を対象とし,検討を行った。期間中外来を受診した声帯麻痺は579例,平均年齢は56.4歳であった。このうち混合性喉頭麻痺は86例で,全体の14.9%,平均年齢は49.4歳であった。術後症例は51例 (59.3%) で,非術後症例は35例 (40.7%) であった。麻痺神経は,迷走神経のみが45例 (52.3%),迷走神経と舌下神経が19例 (22.1%) などであった。自然回復は14例 (16.3%) に認めた。手術治療は24例 (27.9%) に施行し,披裂軟骨内転術,輪状咽頭筋切断術などを単独または組み合わせで行った。
混合性喉頭麻痺症例は,声帯麻痺症例と比較し平均年齢が低い結果であった。麻痺の原因は頭部手術後が多く,過去の報告より著明に増加していた。手術治療は28%に施行され,症状の改善を得た。個々の症例において麻痺神経,麻痺の程度を正しく評価し,症状の改善が期待される例には,手術治療も考慮すべきと考えられた。