2024 年 75 巻 3 号 p. 224-230
日本における結核罹患率は年々減少している。耳鼻咽喉科医が喉頭結核に遭遇する頻度は低くなり,診断に難渋することも多いが,喉頭結核の多くが肺結核を合併するため早期診断が重要である。今回,嗄声を主訴に来院し,当初喉頭肉芽腫を疑ったが,経過より喉頭結核と診断した若年女性の1例を経験したので報告する。症例は21歳女性。嗄声を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し,左声帯炎として保存加療を施行されたが改善なく,当科を紹介受診した。喫煙歴,音声酷使歴はなし。当科初診時,嗄声,左声帯の浮腫,粘膜不整および隆起性病変を認めた。喉頭肉芽腫を疑い保存加療を開始したが改善しないため,全身麻酔下に生検を行う方針となった。術前検査にて拘束性障害を指摘され,精査のための胸部レントゲンおよび胸部CTにて肺結核を疑う像を指摘された。喀痰検査でLAMP法陽性であり肺結核と診断された。専門施設での入院加療を開始され,6カ月間の加療後,喉頭所見は改善した。年齢および生活歴にそぐわない非典型的な喉頭所見を認めた場合には,早期の段階で喉頭結核を鑑別診断にあげることが重要である。