2022 年 48 巻 5 号 p. 174-177
汚水曝露に起因した Aeromonas hydrophila による壊死性軟部組織感染症を合併した広範囲熱傷の1例を経験した. 67歳, 男性. 高速道路を自家用車で走行中に単独事故を起こし, 車両が炎上し熱傷を受傷した. 救急隊到着時には付近の用水路に横たわっていた. 初診時所見では頭部, 顔面, 両上肢, 左背部, 左下肢に深達性Ⅱ度熱傷およびⅢ度熱傷を認め, 30%TBSA, burn index 22.5であった. 受傷早期にデブリードマンを施行し, 予防的抗菌薬投与を行ったにもかかわらず, Aeromonas hydrophila による壊死性軟部組織感染症を認め, その後複数回の追加デブリードマン, 四肢大切断を施行したが感染制御できず, 受傷後37日に永眠した. 免疫能低下をきたしうる広範囲熱傷での汚水曝露では, 重症軟部組織感染症を発症する可能性を常に念頭に置き, 十分な洗浄と受傷早期にデブリードマンを行うことと, 状況に応じて大切断を含めた早期の対応を行うことが重要と考えられた.