溶融金属熱傷は特殊な環境下で生じるため過去の報告が少ない.今回われわれは,溶融銅による熱傷の治療を経験したため報告する.症例は26歳男性で,大学で工芸作品を制作中,溶融銅を鋳型に流し込む際に一部が右手背に飛散し,熱傷を受傷した.来院時,右手背に白色から紅色のまだらなびらんと表皮が焦げたと思われる煤を認めたが,創面の知覚は保たれておりⅡ度熱傷と診断した.保存的加療を行い第28病日に上皮化を確認し,患手の機能障害は認めていない.
溶融金属は200~1,000℃以上と非常に高温のため,接触時間がわずかであっても熱傷深達度が深くなる可能性が高い.また溶融金属熱傷は,金属の皮膚への埋入,金属アレルギー,水蒸気爆発の危険性が指摘されている.職場での安全対策はなされているが,学校では不十分な可能性が示唆された.溶融金属を取り扱う現場では安全対策マニュアルの作成と予防教育を徹底することが重要である.
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