熱傷
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症例
  • 柴 將人, 楠澤 佳悟, 三浦 智孝, 北川 雄一郎, 福田 哲也, 三宅 喬人, 土井 智章, 岡田 英志, 熊田 恵介, 小倉 真治
    2024 年 50 巻 2 号 p. 44-50
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル 認証あり

     超早期手術は広範囲熱傷における治療戦略として知られ,非広範囲熱傷に適応した報告は限られる.今回われわれは,超早期手術と人工真皮および陰圧閉鎖療法を併用し良好な結果を得た非広範囲の火炎熱傷の症例を経験したので報告する.症例は肺癌術後,腎癌による右腎摘出歴があり,慢性腎不全の既往がある66歳男性.ガソリンを染みこませた新聞紙を体に巻き付け着火し受傷,当院救急搬送となった.右体幹と左鼠径に合計14%TBSA,BI 12.5の熱傷を認めた.受傷2日に右体幹のデブリードマンを行い,人工真皮貼付後,陰圧閉鎖療法で固定した.受傷4日に左鼠径に同様の手術を行い全焼痂切除を達成した.受傷18日に分層植皮術を施行して植皮はほぼ全生着し,受傷42日転院となった.
     非広範囲の火炎熱傷に対し,超早期手術と人工真皮・陰圧閉鎖療法を併用することで,患者の苦痛や医療資源を減少させ予後の悪化を防ぐことが可能であった.非広範囲熱傷に対する超早期手術の適応についての一案となる可能性がある.

  • 中島 大智, 小野 真平, 秋山 豪, 小川 令
    2024 年 50 巻 2 号 p. 51-54
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル 認証あり

     溶融金属熱傷は特殊な環境下で生じるため過去の報告が少ない.今回われわれは,溶融銅による熱傷の治療を経験したため報告する.症例は26歳男性で,大学で工芸作品を制作中,溶融銅を鋳型に流し込む際に一部が右手背に飛散し,熱傷を受傷した.来院時,右手背に白色から紅色のまだらなびらんと表皮が焦げたと思われる煤を認めたが,創面の知覚は保たれておりⅡ度熱傷と診断した.保存的加療を行い第28病日に上皮化を確認し,患手の機能障害は認めていない.
     溶融金属は200~1,000℃以上と非常に高温のため,接触時間がわずかであっても熱傷深達度が深くなる可能性が高い.また溶融金属熱傷は,金属の皮膚への埋入,金属アレルギー,水蒸気爆発の危険性が指摘されている.職場での安全対策はなされているが,学校では不十分な可能性が示唆された.溶融金属を取り扱う現場では安全対策マニュアルの作成と予防教育を徹底することが重要である.

  • 伊藤 悠介, 小林 潤貴, 中村 万由子, 近藤 智月, 横尾 和久, 古川 洋志
    2024 年 50 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル 認証あり

     【症例】68歳,女性.
     【既往歴】糖尿病
     【現症】火炎により受傷.顔面,頸部,胸部,左上肢にⅢ度熱傷約15%TBSAを認めた.
     【経過】入院6日目と20日目にデブリードマン,2回目のデブリードマン時に両大腿からの分層植皮術を施行した.術後,植皮部と採皮部ともに緑色の汚染を認めたため洗浄と抗菌作用のある外用剤・被覆材での処置および抗菌薬の全身投与を行ったが,植皮部,採皮部に緑色の壊死組織の出現を認めた.植皮後11日目(入院31日目),敗血症性ショックとしてICU入室となった.その後もデブリードマンを繰り返したが,採皮部の壊死は深筋膜上までいたった.植皮後35日目(入院55日目)に多臓器不全で死亡した.
     【考察】採皮部への感染経路には熱傷部からの接触やburn wound sepsisによる血行性の伝播,catheter-related sepsisが疑われた.感染源となる壊死組織を早期にデブリードマンする必要があると思われる.また採皮部の感染と深部まで壊死を認めた場合は,熱傷部位と同じく十分なデブリードマンが必要と考える.

  • 石井 浩子, 村尾 尚規, 石川 耕資, 徐 東經, 開田 ひろみ, 三浦 隆洋, 前田 拓, 舟山 恵美, 山本 有平
    2024 年 50 巻 2 号 p. 61-65
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル 認証あり

     53歳,男性.仕事中に高周波溶解炉システムの一部に接触し,背部,両手部,左下肢に電撃傷を受傷した.当院救急外来に搬送され,救急科入院となった.初診時血液検査では,ミオグロビン上昇を認めた.創部に関し,当科紹介となった.受傷後1日目に背部受傷部に対し,局所麻酔下にデブリードマンを施行した.その後,局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy)を用いてwound bed preparationを行い,受傷後46日目に全身麻酔下に分層植皮術を施行した.術後経過良好で,植皮術後14日目に自宅退院となった.退院後,受傷以前と同様の職務に復帰することが可能であった.
     本症例に関し,受傷状況をふまえ報告する.

  • 茂野 綾美, 大須賀 章倫, 二神 紘美, 宮尾 大樹, 中島 紳史, 黒木 雄一, 上山 昌史
    2024 年 50 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2024/06/15
    ジャーナル 認証あり

     自家培養表皮は,広範囲熱傷患者の創閉鎖および救命に必要不可欠である.日本では2007年に自家培養表皮ジェイス®(以下ジェイス®)が広範囲熱傷に対して製造販売承認され,現在にいたるまで重症熱傷患者に対して広く利用されている.1枚あたり8cm×10cmのジェイス®は,深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn,DDB)およびⅢ度熱傷(deep burn,DB)の総熱傷面積が30%total body surface area(TBSA)以上の熱傷に対し,50枚を上限に保険上の算定が認められている.2015年1月から2023年9月末までの間に地域医療機能推進機構中京病院において,51枚以上のジェイス®を使用して創閉鎖を行い救命した広範囲熱傷の6症例を報告する.より広範囲かつ深達化した重症熱傷患者の救命に対しては51枚以上のジェイス®の使用が有効である可能性があり,今後さらなる検討が必要である.

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