熱傷
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最新号
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原著
  • 堀口 桃子, 浅井 英樹, 福島 英賢
    2021 年 47 巻 4 号 p. 122-125
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
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     【目的】地域における熱傷の救急搬送状況について調査し, その実態を明らかにする.
     【方法】奈良県中南部 (人口852,307人,3,361km²) を管轄する奈良県広域消防組合が2014年1月から2018年12月までの5年間に搬送した熱傷患者を対象とし, 救急活動記録を後ろ向きに検討した.
     【結果】対象症例は593例で, 軽症が417例 (70.3%) を占めていた. 病院照会回数は中央値で1 (四分位区間1~2) 回であったが, 6歳未満の乳幼児で3回以上要したのが39例 (20.2%) と他年齢群より多い傾向にあった. また, 現場滞在時間の中央値は18歳から64歳までの成年と65歳以上の高齢者でそれぞれ18分, 19分とやや長い傾向にあった.
     【結語】熱傷症例の救急搬送状況の調査では, 乳幼児熱傷例では病院照会回数が多くなり, 成年や高齢者では現場滞在時間が長い傾向にあった.
  • 吉川 慧, 海田 賢彦, 山口 芳裕
    2021 年 47 巻 4 号 p. 126-131
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
    ジャーナル 認証あり
     【はじめに】広範囲熱傷患者の治療における同種移植片の有用性には論を俟たないが, 災害時に多数の熱傷患者の発生が想定される本邦におけるその僅少在庫量を慮ると, 人工真皮を最大限に活用する広範囲熱傷患者の治療に習熟しておくことはきわめて意義の大きなことといえる.
     当施設においては2015年8月, 日本スキンバンクネットワークの活動停止を契機として人工真皮を積極的に活用し, その有用性を検証してきた. 2016年には総熱傷面積 (total body surface area : 以下TBSA) 96%熱傷患者, 2017年にはTBSA 86%熱傷患者に対し, 同種移植片を使用せず人工真皮を最大限に活用することにより救命に成功した. 人工真皮単独使用によるTBSA 80%をこえる広範囲熱傷の救命例を踏まえ, 重症熱傷患者に対する同種移植片と人工真皮の使用に関する後方視的検討から広範囲熱傷患者における人工真皮の有用性について報告する.
     【対象および方法】2008年4月から12年間に当施設に入院した熱傷患者のうち3日以内の死亡例, 気道熱傷単独例をのぞいたTBSA 30%以上の広範囲熱傷計43例について, 同種移植片単独使用群と人工真皮単独使用群の2群に分け, 年齢, TBSA, Ⅱ度熱傷面積, Ⅲ度熱傷面積, burn index (以下BI), prognostic burn index (以下PBI), 気道熱傷合併率, 受傷後1週間以内, 2週間以内の菌血症合併率, 菌血症発症日, 死亡率, ICU滞在日数について後方視的に比較検討した.
      【結果】同種移植片単独使用群と人工真皮単独使用群の2群比較においてBI, PBI, 気道熱傷の合併率などの重症度に差はなく, また予後についても有意な差は認めなかった. さらに受傷後1週間以内, 2週間以内の菌血症合併率, 菌血症発症日といった感染面の指標に関しても差は認めなかった.
     【結語】広範囲熱傷患者において人工真皮は同種移植片と同等の効果が期待できる可能性がある.
症例
  • 大倉 淑寛, 山川 潤, 松永 裕樹, 志水 祐介, 濱邊 祐一
    2021 年 47 巻 4 号 p. 132-136
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
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     広範囲熱傷の患者では, 凝固機能障害や貧血が進行し血液製剤を使用することが多い. エホバの証人に代表される宗教上の理由で輸血を拒否する患者では, 血液製剤が使用できないこともあり治療に難渋することが予想される. 今回, 輸血を拒否した広範囲熱傷の患者の治療を経験したので報告する. 60歳, 男性. 胸まで熱湯に浸かり, 52%TBSAのⅡ度熱傷を受傷. 来院後, エホバの証人であることが判明し, 血液製剤の使用を拒否されたため細胞外液製剤のみの投与で治療を開始した. 輸血が必要な凝固障害や貧血の進行はなく, 保存加療にて熱傷創は上皮化し退院となった. 宗教的輸血拒否に関するガイドラインや判例では, 患者の人格権は十分に尊重されるべきとされている. 治療方針の対立が生じた場合に転院等を促す方法も示されているが, 問題の先送りや主治医としての責任放棄とも捉えられかねない. 患者や家族と治療方針について十分な対話を行い, 納得した医療を行っていくことが必要である.
  • 遊佐 優, 天羽 健一
    2021 年 47 巻 4 号 p. 137-142
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
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     手の熱傷は全体の80%以上を占める頻度の高い部位であり, 特にⅢ度熱傷の場合にはArtzの基準でも重症熱傷に分類される. 手は解剖学的に手背と手掌で大きく異なり, 手背では皮膚が薄く伸筋腱や靱帯, 骨の深部組織に損傷が及びやすいため, 治療期間が長引くと感染や拘縮の危険性が高くなる. 深部組織が露出した場合には遊離皮弁や遠隔皮弁, 局所皮弁による再建が必要になるが, 手術手技や術後安静度の必要性などを考慮して適応を検討する必要がある. 今回われわれは, 手術計画が理想的に行えなかった両側手背Ⅲ度熱傷に対し鼠径皮弁と温存を断念した示指を利用した骨抜き皮弁から指動脈島状皮弁を挙上し, 腱露出を伴う母指を温存できた症例を経験したため報告する.
  • 野中 榮仁, 草田 理恵子, 小野 紗耶香, 井田 夕紀子, 小宮 貴子, 松村 一
    2021 年 47 巻 4 号 p. 143-146
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
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     てんかん発作を起こした際に熱傷を受傷した症例は重症化しやすいことは知られている. 今回, 神経梅毒によるてんかん発作中に熱傷を受傷した,受傷機転がまれな症例を経験したため報告する.
     症例は28歳, 女性. 4年前に梅毒血清反応陽性を指摘, 加療していたが, 通院を自己判断にて中断していた. 1年前より発症し, 当時原因不明であったてんかん発作に対しては近医より処方されていた抗てんかん薬を内服していた. 今回, ヘアドライヤーを使用中にてんかん発作を発症し, その熱風で左上腕に深達性Ⅱ度熱傷 (DDB) を受傷した. 入院後, 局所麻酔下に左上腕のデブリードマン, 分層植皮術を施行した. 入院時採血にて, 梅毒トレポネーマ抗体 (TPLA) 陽性, 非トレポネーマ脂質抗体 (以下RPR) 陽性であり, その後施行した髄液検査で髄液RPR陽性となり, 画像所見とあわせ総合的に神経梅毒の診断にいたった. 本症例の受傷機転でもあるてんかん発作は, 神経梅毒による症状と考えられた. 植皮の生着を確認し, 神経梅毒に対しペニシリンGによる治療を行った.
     梅毒患者は増加傾向にあり, 若年層でのてんかん等の神経症状を機転とした熱傷患者を診察した際には, 梅毒の可能性も念頭に置いて治療を行うことが望ましいと考えられた.
  • 熊川 靖章, 中島 紳史, 近藤 豊, 米田 和弘, 関 謙太郎, 黒木 雄一, 大須賀 章倫, 岡本 健, 田中 裕, 上山 昌史
    2021 年 47 巻 4 号 p. 147-152
    発行日: 2021/11/15
    公開日: 2021/11/15
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     広範囲にわたる頭蓋骨深達・感染続発の頭部熱傷を経験し, 感染源が頭蓋骨腐骨起因であることの診断, 頭蓋骨のデブリードマン, 肉芽形成に難渋したが, 創閉鎖・救命を成しえた症例を経験したので報告する. 症例は79歳, 男性, 頭頸部中心のⅢ度熱傷, TBSA 24%と初期評価され, 同日に手や頭部等の特殊部位をのぞくTBSA 20%焼痂に対する緊急デブリードマンを実施した. 第5病日に頭部の残存焼痂感染が顕在化し全身状態悪化し, 第7病日に頭部のデブリードマンを行った. 骨膜壊死と頭蓋骨の露出を認め, 頭部のⅣ度熱傷と再評価した. その後肉芽化の進行なく同部感染を繰り返したため頭蓋骨が感染源, 腐骨化していると再評価し, 手術にて頭蓋骨外板を削り, 板間層を露出して人工真皮貼付した. その後追加で創閉鎖を行い, リハビリテーション目的に第224病日転院となった. 熱傷が頭蓋骨まで深達し感染源となっている場合, 早期の壊死骨デブリードマンが有用である.
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