抄録
グアニジンの強い塩基性を説明するために導入されたY字芳香族性における典型化合物として、トリメチレンメタンの3個のメチレンをn個の炭素原子から成る鎖状共役系に置き換えた系を提案した。この化合物のπ電子共役系のエネルギースペクトルを、ヒュッケル近似の範囲内で一般的に求めた。共役系が閉殻を成すことを系のエネルギー的な安定化の必要条件として、Y字芳香族性が出現するための魔法数を求めた。いくつかの典型化合物の安定化エネルギーを鎖状共役系を参照系として求め、魔法数の有効性を検討した。ただし、各系のエネルギーはヒュッケル近似の範囲内で求めた。魔法数とエネルギー的安定化の傾向は完全には一致しなかったが、π電子系の数が魔法数と一致する時にエネルギー的な不安定化が減少する傾向が見られた。