2001 年 2 巻 p. 37-44
これまで経験に基づいて行われてきた化合物の新規合成経路を創生する手段として、合成経路設計システムが実用的となりつつある。このようなシステムは、自身が有するデータベースと推論ルーチンにより合成経路を与える。しかしながら、一般的に複数の合成経路を提案するのみで、どの経路を選択するかの最終判断は、合成を行う個々の化学者に委ねられる。もしも提案された合成経路に含まれる反応の容易さが、計算化学的手法により判断できれば、だれにでも経路のランクづけが可能となる。遷移状態探索と極限的反応座標計算を十分に活用すれば、そのことは可能であるが、結果を得るために長い時間が必要とされる。本研究では、遷移状態ライブラリを構築し、合成経路の可能性を見極めるために必要な時間を短縮するシステム「遷移状態データベース」の概要および、それ利用した合成経路のランクづけの方法について述べる。