Journal of Computer Aided Chemistry
Online ISSN : 1345-8647
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<ファクトデータベース・フリーウェア特集号> ゲノム時代のバイオインフォマティクスツール:インシリコ実験への第一歩(分子クローニングに着目して)
大山  彰黒川  顕恵内  京徹斉藤  仁浩金谷  重彦アミン ムハメドアルタフウル小笠原  直毅
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2006 年 7 巻 p. 102-115

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抄録
インビトロ(試験管内)での生物学実験を代替する手段として有力と考えられているインシリコ(コンピュータ内)での分子生物学実験を試みている。生物学の数多くの分野の中でも分子クローニングに着目し、生物分野でもっとも系統的にまた網羅的に情報が収集されているDNA情報を利用する。インシリコ実験にはいくつかの利点があり、たとえば、分子生物学実験の計画に活用できる、実験ノートの代用となる、分子生物学実験の教育用ツールとして用いることができることなどが挙げられる。しかしながら、インシリコ実験を実装するためには、制限酵素による消化切断生成物の末端形状やPCR生成物などの記録方法などの定式化が必要である。このため、GenBank/EMBLデータベース注釈規約にいくつかの拡張を行い、新規FeatureおよびQualifierとして定義した。さらに、DNA配列上に表現されたFeatureはPCRや制限酵素消化切断などの際に部分的に削られることがあり、このためこの部分的に削られたFeatureを記述する規約の定式化を行った。また、DNAの2面的な性質により、通常興味の対象としては片方のStrandのみを表示するが、インシリコ実験を実装するソフトウェアにおいてはこの対象としての長鎖DNA配列をその上にFeatureを保持したままその逆相補鎖と頻繁に切り替える操作が必要であることを示した。これらの定義やデータ記述に従い、我々は「インシリコモレキュラークローニング」と呼ぶインシリコ実験ソフトウェアを開発し、いくつかの典型的な分子クローニング実験をコンピュータ上で実行し、この方法が有効であることを示した。
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© 2006 日本化学会
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