臨床用MRI装置を用いたプロトン(1H,水素の原子核)MRスペクトロスコピー(1H-MRS)では,複数の脳内代謝物濃度を一度に非侵襲的に知ることが可能であり,MR画像所見などとの組み合わせにより,より詳細な診断や治療方針の決定に起用できる可能性が示唆されている.本稿では,前半ではin vivoヒト脳1H-MRSの基礎的事項の説明,およびわれわれの施設での臨床MRS撮像について紹介した.後半にMRSの臨床応用として,新生児の疾患の中から,後天的な脳障害がその後の神経発達に影響を及ぼす可能性が非常に高い「早産・低出生体重児」および「新生児仮死児」の症例を挙げ,MRSの役割およびその診断能について概説した.