子どものこころと脳の発達
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特集
総説
  • 伊達岡 五月, 山本 知加, 松村 菜々子, Natasha Yuriko dos Santos Kawata, 牧野 拓也, 清水 康弘, ...
    2024 年 15 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により,子どもとその養育者を取り巻く環境が危機に直面した.この問題に早急に対応するため,福井大学子どものこころの発達研究センターでは,2021年9月からビデオ会議システムを利用したリアルタイム(同期型)のオンライン心理支援の予備的調査を開始した.この調査では,福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部および共同研究機関を受診している神経発達症の子どもやその養育者を対象に,以下の4つのプログラムを実施した.①ソーシャルスキルトレーニング,②ペアレント・トレーニング,③ボーイズタウン・コモンセンスペアレンティング®,および④親子相互交流療法.その結果,オンラインによる心理支援は多様なライフスタイルを持つ親子に対して,時間や居住地域などの制約による支援への断念を防ぎ,さらに新たな支援やサービスへのアクセスへの向上に繋がることが期待された.

  • 山本 知加, 伊達岡 五月
    2024 年 15 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)児へのソーシャルスキル介入は効果的であるとされている.プログラムの多くが対面形式で行われてきたが,ASD児の特性に合わせた介入や利便性の観点から,遠隔での介入法の開発と効果の検証,実施可能性の検討などが行われてきた.COVID-19パンデミック後には,オンライン会議システムを用いた同期型の介入の報告が増加し,広がりを見せている.本稿では,遠隔での介入法に関するいくつかの既報を紹介するとともに,我々が実施したオンライン会議システムを用いた介入の実際,そこから考えられた遠隔ソーシャルスキル介入の強みと課題を検討する.

  • 田中 早苗, 駒米 愛子, 辻 知陽
    2024 年 15 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちは,自己理解や他者理解の方法,相互コミュニケーションに特徴があり,社会適応に課題を抱えることがある.この課題への社会的処方箋として,Tanakaら(2020)は,参加型アートワークショップ(AWS)の効果に着目し,唾液中オキシトシンが生理的効果指標になり得る可能性を示した.本稿では,オンライン形式によるAWSを用いた神経内分泌学的反応の研究について,一部経過を報告する.粘土や描画など視覚的なアートを用いたオンラインでのAWSの前後と中盤に唾液を収集し,オキシトシンおよびコルチゾールの濃度を測定した.その結果,唾液オキシトシン濃度の上昇傾向と,コルチゾール濃度の低下傾向を捉えている.ASDにとってオンラインAWSへの参加は,少なくともストレスを減退させ,オンラインAWSの実施方法によって,オキシトシンの分泌が促進される可能性がある.

  • 吉田 斎子, 関 陽一
    2024 年 15 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    コロナ禍の影響により,急速に生活の中でのオンライン化が進んできた.学校ではオンラインでの授業,会社ではリモートワークが進められ,通学・通勤し直接対面を当然としていたが,自宅にて遠隔で勉強や仕事をすることが浸透していった.心理療法の一つである認知行動療法も従来の対面式から遠隔式での実施がより身近になっていった.筆者の所属機関では,遠隔での認知行動療法について,コロナ禍以前より臨床研究を行っている.直接対面して行う従来の対面式での認知行動療法では,遠方のため距離的に移動が難しい,または身体的・精神的に外出が困難な状況である場合,直接対面せずとも,遠隔での認知行動療法が実施できることで,メリットがある場合もある.遠隔での認知行動療法について概説する.

  • 吉崎 亜里香
    2024 年 15 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    発達早期の睡眠は心身の成長発達に不可欠であるが,本邦は乳児から成人まで世界有数の短時間睡眠で知られ,睡眠リテラシーの普及が課題となってきた.子どもの睡眠習慣には多様な要因が関連する上,改善には養育者の行動変容とその継続を要するため,一朝一夕での解決は困難といえる.

    こうした課題に対し,大阪大学大学院連合小児発達学研究科谷池研究室では,2014年から双方向性睡眠啓発アプリ「ねんねナビ」を開発し社会実装を行ってきた.ねんねナビでは,小児睡眠医療のエビデンスと行動療法をベースに,各家庭が入力した生活実態に応じてスモールステップな目標となるよう調節したアドバイスを複数送信し,その内1つを養育者が選んで実行することを月に一度のペースで繰り返すシステムを採用し,主体的かつ段階的な養育行動の変容を通して子どもの睡眠習慣改善を目指す.双方向的な情報のやりとりを繰り返すデザインと,養育者のエンパワメントに特化する点が特徴である.本稿では,ねんねナビ開発の経緯やシステムの詳細,社会実装の結果とともに,介入事例を紹介する.

  • 斉藤 まなぶ
    2024 年 15 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    日本の発達障害施策は欧米に比べ10年遅れている.我が国の発達障害人材へのサポート不足による日本の経済損失推計額は約2.3兆円であり,潜在者を含めるとさらに2.5倍の経済損失が存在する可能性もあると令和3年に報告され,子ども家庭庁を中心に発達障害の早期介入の必要性がようやく周知されてきている.乳幼児健診での発達障害の発見率は就学時の支援率に比べて全国的に低い水準で推移しており,現場において様々な工夫がなされているが,統一した基準がないのが課題の一つである.弘前大学では10年前から5歳児,5年前から3歳児の早期発見のためのスクリーニングの開発を行ってきた.開発の経緯,精度確認,WEB化の開発研究を行い,法の整備や時代の流れとあいまって,初期には見えなかった展望が少しずつ見通せるようになっている.本稿ではそれらについて概説を行う.

  • 西村 倫子, 和久田 学
    2024 年 15 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    学齢期は情緒的,行動的問題が多くみられる時期である.学校はこのようなメンタルヘルスに関わる問題をスクリーニングするのに適した場であり,その重要性が以前から指摘されてきた.一方で,スクリーニングのための資金や人材の確保,スタッフの知識やトレーニングの不足,頻繁な異動,リスクを特定した後のサポート体制といった懸念も多く指摘されている.我々はこれまでに,メンタルヘルススクリーニングツールのアプリ化と,それに基づいた学校ベースのスクリーニングの実施によって,コロナ禍における小中学生の抑うつ・不安症状の現状と推移を調査してきた.また教育委員会との協働により,毎日の健康観察をアプリ化し,そのデータを利活用することによって,メンタルヘルスの低下や欠席の多さを予測するモデルの構築を進めてきた.本稿では,これらの取り組みを紹介するとともに,洗い出された課題について考察する.

  • 清水 栄司, 古川 美之, 土屋 綾子, 池水 結輝, 小柴 孝子, 堀 清一郎
    2024 年 15 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/02
    ジャーナル フリー

    児童生徒の自殺予防に係る取組として,WEBでの子どものストレスチェックを推進している.現時点で,学校長,教頭,副校長,学年主任,担任等が職員会議,教育相談部会で子どものストレスチェックの実施の情報共有を行い,教育相談担当教員が中心となり,実施する学校が多い.今後は,2次予防の健康診断のように学校医が養護教諭とともに,1次予防の子どものストレスチェックを実施する形や保健体育の教員が保健体育の「心身の相関とストレス」単元等の授業の中でアクティブ・ラーニングとして活用する形も期待している.ストレス対処法である認知行動療法を活用し,不登校の児童生徒等が登校再開する際の3次予防として,復帰支援,再発予防にも取り組むべきである.政策提言として,いじめの認知件数のように,高ストレス児童生徒の認知件数を全国の小・中・高等学校及び特別支援学校から文部科学省がデータ収集し,自殺対策に活用していただきたいと考えている.

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