子どものこころと脳の発達
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最新号
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総説
  • 小林 勝年, 儀間 裕貴, 北原 佶
    2020 年 11 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    療育とは児童福祉の精神に依拠しながらも「不治」という医療の限界を超えた課題に対する教育との架橋的試みから始まり,医療と育成の合成語として誕生した.これまで,医療モデルと生活モデルという異なる障害モデルより療育の目標や方法なども異なる療育が実践されてきた.しかし,今日では人間発達における生物心理社会モデルの浸透などにより生活モデルに集約される傾向にあり,「発達の最適化」が療育の共通目標として認識されつつある.すなわち,発達的可能性をどのように保障しているかという点に注目が寄せられたが,その議論を前進させるのは研究デザインによって位置づけられるエビデンスレベルと療育実践におけるエビデンス検証である.が,こうした包括的アプローチにおいては安易な時間的展望の中で処理されたり,低いエビデンスレベルのまま実践されるという陥穽が用意されていることを忘れてはなるまい.

  • 中山 秀紀, 樋口 進
    2020 年 11 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    近年インターネットやゲームの依存的使用が重大な問題になっている.特にゲームの問題使用に関しては,インターネットゲーム障害(IGD)や,ゲーム障害(症)として,DSM-5やICD-11の中の診断基準に盛り込まれるようになった.そして思春期世代のIGDが疑われる人は1.2–5.9%の間と推計されている.インターネットやゲームの依存的使用は,注意欠如多動性症や精神症状の悪化,睡眠問題との関連が指摘されている.治療として,認知行動療法などの心理・精神療法や,合併精神疾患(発達障害)に対する治療,また心理療法やアクティビティなどを組み合わせた治療キャンプなども試みられている.特に発達障害やその傾向にある人ではリスクが増大するようであり,保護者等への啓発や療育の役割は大きいと考えられる.子どもたちの健全な育成のために,多くの関係諸機関が連携して予防的,治療的取り組みが進められることが望まれる.

  • 石井 篤子, 奥野 裕子
    2020 年 11 巻 1 号 p. 17-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,発達障害傾向を持つ生徒を担当する通信制高校教員に,TV会議システムを用いた遠隔式ティーチャートレーニング介入を実施し,評価指標とした生徒の行動,対人応答性,教師の自信度において,対面式ティーチャートレーニング群(n=13),コントロール群(n=17),TV会議式ティーチャートレーニング群(n=15)の3群比較にて有用性を検討した.結果よりTV会議システムを用いた遠隔式ティーチャートレーニングでは,教員の自信度を除く,生徒の行動面と対人応答性において,対面式ティーチャートレーニングと同程度の有意な改善がみられた.TV会議システムの接続環境の整備の必要性など議論の余地は残したが,教員への発達障害支援のツールとしてその有用性が示されたといえる.

  • 黒田 美保
    2020 年 11 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症児への早期介入の効果が近年報告されているが,専門家による介入を受けられる子どもの数には限りがあり,コミュニティ全体を包括的に支援することは難しい.この点,早期介入法の1つであるJASPER(Joint Attention, Symbolic Play, Engagement, and Regulation)は,特にコミュニティベースで,また,非専門家である教師等が行える方法として,注目に値する.JASPERは,乳幼児から小学校低学年までの比較的広い対象に連続的に使用できる.プリスクール等の実際に対人コミュニケーションを必要とする生活の場で教師等が実施することにより,心理士がセラピールームで行うのと同じくらいの言語や社会性の発達がみられたと報告されている.教師が実施できる検査SPACE(Short Play And Communication Evaluation)も開発され,子どもの遊びの水準,共同注意,要求行動を簡便に評価すると同時に目標を立てられる.本論では,自閉スペクトラム症の早期支援の概観と,JASPERやSPACEの方略やコミュニティにおける実践について述べる.

  • 平谷 美智夫
    2020 年 11 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    DSM-5で限局性学習症に分類される学習困難は読字障害を除いて多くは病態理解に必要なエビデンスや検査方法も乏しく,診断基準もあいまいで治療は教育そのものになることも多く,医療が診断・治療の対象とすることは困難である.発達性ディスレクシア:Developmental Dyslexia DDについて小枝は「症状の普遍性とその背景にある病態の解明,家族集積性や遺伝に関する知見,脳病理所見,予後に関する知見などが明らかになりつつあり,一つの疾患単位として認知されてきておりれっきとした医療の対象となる疾患である」と述べている(稲垣ら,2015; Shaywitz SEら,2019).DDは注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)を併存する頻度が高い.DDを併存するADHDやASDはDDを併存しないADHDやASDに比べて優位に学業成績が振るわず,特に英語の成績は惨憺たる結果であり,英語教育の在り方を再検討すべきである.対応としては,合理的な配慮(文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針8, 2015)がじょじょに教育現場に浸透しつつあるが,まだまだ不十分でありその効果についてもわが国では充分なエビデンスは得られていない.筆者は,ICTの活用が最も効果的であると考えている.ADHDやASDの合併がないDDでは周囲の理解と支援があり,職業選択が適切であれば自立は難しくはない(平谷,2018).本稿では,LDの中核でありエビデンスがかなり蓄積された読字障害(dyslexia)について,筆者のこれまでの実践経験を紹介する.

  • 津田 明美
    2020 年 11 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    当センターは県で唯一の県立県営の療育センターであり,医療と福祉の機能を持っている.療育というのは,「その児の特性に合わせた子育てをすることである」と考え,それぞれの職種の専門性,医療・福祉の資源を活用して展開している.児本人は,個別療育や集団療育で「できた!」という体験をすることにより自信をもちスキルアップを図る,保護者は発達障がいについての知識をもち支援方法について学ぶことで我が子の特性を活かした子育てができるようになることを目ざしている.発達障がいの理解・支援方法の伝達のために種々の講座や特別外来を計画実施している.TEACCH, ABA(PECS・ペアプロ・ペアトレ),感覚統合療法,等を基本としている.福井県は発達障害支援として【早期発見⇒早期支援⇒途切れのない支援】を目指しており,当センターは「ふくいっこファイル」の活用を推進し,継続した支援の最初のスタートとしての療育を担っている.

  • 小林 宏明
    2020 年 11 巻 1 号 p. 48-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    近年,発達性吃音のある学齢児の指導(訓練)・支援方法として,子ども一人ひとりの吃音の言語症状,心理症状,周囲の環境などの要因に応じた指導・支援を行う多面的包括的アプローチが支持されている.そこで,本稿では,まず,吃音の症状,出現率,原因論及び,吃音のある学齢児が抱える困難と,多面的包括的アプローチを中心とした学齢期吃音の指導法に関する国内外の動向を概説した.そして,これらを踏まえた筆者の実践である,ことばの教室での実践を想定した「ICF(国際生活機能分類)に基づいた学齢期吃音のアセスメントプログラム」,アセスメント及び指導・支援の効果検証に用いる評価ツールである「吃音のある学齢児の学校生活における活動・環境質問紙」,小中学校における教員の吃音の理解と配慮・支援の普及を意図した「子どもの吃音サポートガイド」の概要と今後の課題を述べた.

  • 大島 郁葉
    2020 年 11 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症の(ASD)の正しい理解に基づく対処スキルの向上を目的とした介入は乏しい.我々は先行研究を基に「児童思春期の高機能ASD者とその保護者を対象とした認知行動療法(CBT)を用いたASDの心理教育プログラム(Aware and Care for my Autistic Traits: ACAT)」を開発した.本研究はACATの有効性を多施設型ランダム化比較試験によって明らかにする.

    48名の参加者を24名ずつACAT群および通常治療群に割り付け,ACAT群は,通常治療(通院精神療法)に加え週1回100分のセッションを6週間,10週目にフォローアップセッションを受けた.両群間に対し,効果指標の変化量の比較を行う.主要評価はAutism Knowledge Questionnaireである.本研究は児童思春期のASD者に対するエビデンスに基づく治療戦略に貢献するものと期待される.

  • 田中 早苗, 山田 智子
    2020 年 11 巻 1 号 p. 62-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    自閉スペクトラム症(ASD)の特性を持つ人は,自分や他者に対する理解や相互的なコミュニケーションのやり方がユニークであるがゆえ,様々な社会的な適応場面において困難な状況に直面することが多い.中でも学校という大きな集団の中で,同年代のクラスメイトや仲間との関わりにおいて,友だち作りや友だちとの良好な付き合いを継続することが難しく,孤立しがちである.多くの子どもたちが友だちを作り,社会的な交流を活発に行う際には,友だち作りが成功するための方法,法則があり,またそうするためのモチベーションが存在する.その法則を,ASDの人の学び方に合わせた工夫を盛り込んで共に考え身につけるトレーニングプログラムPEERSがカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発され,世界中で実践され,本邦においてもその有効性が実証されている.プログラムの実施方法や参加者が何を学ぶかを筆者らの実践とともに詳説し,今後の展望をまとめた.

原著論文
  • 北野 華奈恵, 安倍 博, 上原 佳子, 礪波 利圭, 出村 佳美, 長谷川 智子
    2020 年 11 巻 1 号 p. 71-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    睡眠障害のない健康な9~15歳の29名を対象に,子どもの睡眠に対するタクティール®ケアの効果を生理・心理学的指標を用いて検証することを目的とした.その際,タクティール®ケアを実施する施術群と,実施しない対照群に分け,タクティール®ケアを日中に実施し,実験中の睡眠に対する即時的な効果と,実験当夜の睡眠に対する遅延的な効果を検証した.その結果,子どもへの日中のタクティール®ケアの実施は,明確な即時的な効果は認められなかった.夜間の睡眠状況では,施術群での睡眠の質に対する睡眠感が対照群よりも有意に高く,遅延的な効果がある可能性が示唆された.今後の研究において,タクティール®ケアが,繰り返し継続的に実施した場合の効果を確かめることなどにより,子どもの睡眠改善方法としてのさらなる効果を期待できるものと考える.

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