Journal of Computer Chemistry, Japan
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Book Review
Intermolecular Forces of Organic Molecules: Analysis of Intermolecular Interaction Energy by Ab Initio Molecular Orbital Calculations (in Japanese)
Umpei NAGASHIMA
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2015 Volume 14 Issue 2 Pages A12

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書名:有機分子の分子間力-Ab Initio分子軌道法による 分子間相互作用エネルギーの解析-

著者:都築 誠二

出版社:東京大学出版会

発行年:2015

本書は,著者が長らく行ってきた,ab initio (非経験的) 分子軌道法に基づく分子間相互作用エネルギーの計算方法と計算結果の精度を含む解析手法を実際の分子を用いて解説する.さらにその解析結果に基づく力場パラメータ決定法を交え,分子間相互作用エネルギーの解析に改良の方向と精度向上の指針を与える.

章立ては序章+11章である.序章から2章には分子軌道法の簡単な解説と分子間相互作用エネルギー計算法の紹介を行い,基底関数の特性について説明している.続く3章で計算結果の精度について論じている.

4章から9章には,具体的な分子系を用いて分子間相互作用エネルギー計算法をより詳しく示しながら計算方法とその精度を詳細に論じている.4章 飽和炭化水素,5章 水素結合,6章 芳香族分子,7章 イオン,8章 フッ素,9章 ハロゲン結合である.それぞれの章で読者は分子間相互作用について新たな知識を手にするが,本書のトピックは9章のハロゲン結合の解説である.ハロゲン結合の解説は珠玉であり,本書のようなハロゲン結合の解説を含む教科書は他にない.この4–9章にまとめられている分子間相互作用エネルギー解析の各論は読んでいると心が浮き浮きしてくる.

これに続く10章は密度汎関数法による分子間相互作用エネルギーの計算法と精度を論じ,さらに11章では力場パラメータの決定方法を紹介していて,ab initio分子軌道法から分子動力学法への橋渡しの指針を与えている.

量子化学を学ぶため,「新しい量子化学–電子構造の理論入門」Attila Szabo (著), Neil S. Ostlund (著),大野 公男 (翻訳), 望月 祐志 (翻訳), 阪井 健男 (翻訳),東京大学出版会 1987,を読み始めた3年次学生の副読本として,有機化学合成を専門とする研究者の分子間相互作用エネルギーのおさらいに適した教科書として,様々なレベルの化学者に手にとってもらいたい教科書である.分子軌道法の名著(藤永茂「分子軌道法」岩波書店)と分子間相互作用エネルギーの教科書として目を見張らせる (都築誠二著 「有機分子の分子間力 –Ab initio分子軌道法による分子間相互作用エネルギーの解析–」 東京大学出版会 2015)を日本語で読める幸せを感謝する.

 
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