速報
天然ゴムの配座探索と構造解析
2015 年 14 巻 3 号 p. 90-91
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2015 年 14 巻 3 号 p. 90-91
Natural rubber is an excellent material in elasticity and abrasion resistance, so that it is used for tires of airplanes and heavy automobiles, such as a bus. It is impossible to make a synthetic rubber having the same physical properties as the natural rubber, even with the latest synthesis technology. However, the detailed structure of a natural rubber is still unclear. The aim of this study is to clarify the conformation and the thermochemical properties of a natural rubber. The conformational search and calculation of thermodynamic variables were performed with the computer chemistry program CONFLEX. In the calculation, we used two models; one with phosphate group and the with no phosphate group. The model having a phosphate group has a linear stable conformation, while the other has a coiled coherent one. As a result, we found that the end group of natural rubber has a significant effect on its stable structure. Moreover, natural rubber with a linear structure had relatively lower energy.
パラゴムの樹から得られる天然ゴムは弾性や耐摩耗性に優れ，飛行機やトラック，バスのタイヤなどに必須である．天然ゴムを模倣した高分子の合成が盛んになったが最新の精密重合技術をもってしても天然ゴムと同様の物性を示す合成ゴムを作ることは不可能である．この大きな理由として，「なぜ天然ゴムは優れているか」という根本的問題を解決できていないことが挙げられる．
天然ゴムの重合における開始反応と停止反応は不明であり，幾何異性の規制機構についてもほとんど解明されていない．分子量が巨大な天然ゴムの末端基や分岐点の構造を調べることは最先端の分析機器を用いても非常に困難である．
本研究では本学(長岡技術科学大学)の河原等が明らかにした天然ゴムの生合成機構よりその構造を仮定し，分子力学法(CONFLEX)によって配座探索と熱力学的諸量の計算を行うことで天然ゴムがどのような構造，配座で存在するのか考察することを目的とした[1]．
本研究において，分子力学法にはCONFLEX法を用い，その力場パラメータにはMMFF94Sを用いた．計算モデルはFigure 1のような天然ゴムの構造であり，リン酸基(-OPP)を有するものとそうでないものについて配座探索，熱力学的諸量の計算を行った．計算しやすいようにtrans-1,4-イソプレンの数は2 (2 = チチタケ，3 = タンポポ)，まだ解明されていない官能基についてはCH3と仮定して行った．
Structure of natural rubber in the calculation of this study.
cis-1,4-イソプレンのnについては徐々に増やして計算を行い，その結果を考察した．
配座探索の結果についてはcis-1,4-イソプレン単位が3つ以上で，実に1000以上の配座パターンが得られた．
それらの安定配座についてはコイル状に丸まったものが得られ，これはイソプレンの数を変えても同様の結果となった．(Figure 2)
The most stable conformation of n = 5 and 15.
しかし，末端にリン酸基を有する構造の最安定配座は以下に示すような直線的に伸びているものが得られ，これまでとは大きく異なった結果であることが分かった．(Figure 3)
n = 5, the most stable conformation having a phosphoric acid group.
本研究の計算結果より，天然ゴムの末端基はその安定配座に大きな影響を及ぼすと考えられる．また，天然ゴムは直線状に伸びた配座で存在している可能性が高いことを示した．
