Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
Development and application of a double-network gel modeling method for fracture processes using a coarse-grained molecular dynamics simulation
Keisuke SAITOYuji HIGUCHINobuki OZAWAMomoji KUBO
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Volume 14 (2015) Issue 3 Pages 94-95

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Abstract

We examine the mechanism of fracture processes in a double-network (DN) gel model by using a coarse-grained molecular dynamics simulation. Initially, we develop a modeling method for DN gel containing both slightly and highly cross-linked networks, and then stretch the DN gel model. During stretching, the highly cross-linked network begins to dissociate at a strain of 1.0, increasing the stress. At strains from 4.0 to 5.0, the slightly and highly cross-linked networks simultaneously dissociate and the stress decreases. Then, the dissociation of the highly cross-linked network stops and only the slightly cross-linked network dissociates at a strain of 12.0, while the stress remains almost the same. We reveal that characteristics of each type of network gradually appear in the DN gel. Next, we change the polymer chain length to reveal its influence on the mechanical properties of the gel. An increase in the length of the slightly cross-linked network chains improves the strength of the DN gel, whereas that of the highly cross-linked network chains does not affect its strength. An increase in the slightly cross-linked network chain length increases the number of entanglements, leading to the increase in strength.

1 目的

ゲルは人体との高い適合性から人工関節などの生体利用が期待されている.近年,密と疎2種類の網目構造を導入することで通常の約40倍の強度をもつダブルネットワーク(DN)ゲルが開発され,今まで困難とされてきた高荷重下でのゲルの利用が期待されている [1].さらなる高強度ゲルを開発するためには高強度化のメカニズムを解明する必要があるが,ゲルの機械特性は高分子鎖のダイナミクスが重要であり,実験での観測は難しい.そこで本研究では粗視化分子動力学法を用いたシミュレーションによってDNゲルの高強度メカニズム,破断時のダイナミクスを分子スケールで解析した.

2 DNゲルモデリング手法の開発

本研究ではビーズ・スプリング模型を使用した粗視化分子動力学法を用いてDNゲルの破壊プロセスを解析した.DNゲルは剛直で密に架橋したポリ2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(PAMPS)と柔軟で疎に架橋したポリアクリルアミド(PAAm)を配合し作成される.これまでDNゲルのMDシミュレーションはほとんど行われていなかったため,本研究ではDNゲルの疎密のネットワークを表すために1つのゲルモデル内で堅さ,架橋密度を変えることで2種類のゲルを再現するモデリング手法を開発した.作成したモデルで2軸固定の1軸伸張を行った.単位長さを球の直径σ,単位エネルギーをkBTとし,ボルツマン定数をkB,温度をTとした.モデルの伸張方向の初期長さをL0,変形量をΔLとし,ひずみΔL/L0を計算した.

3 結果・考察

Figure 1にDNゲルのスナップショットを,Figure 2に応力ひずみ線図とPAMPS,PAAm別の切断数の推移を示す.ひずみ4.0までの間でPAMPSの切断と応力の立ち上がりが見られた.ひずみ4.0から5.0の領域ではPAMPSとPAAmが共に切断され,応力が変化する領域が現れた.ひずみ5.0から12.0ではPAAmのみの切断と応力が0.3の一定値で推移する領域が現れた.ひずみが2.0のFigure 1 (a)では剛直なPAMPS鎖が伸張され,切断が始まっている.さらに変形が進みPAMPS鎖の切断数が増加しなくなるFigure 1 (b)ではPAMPS鎖とPAAm鎖の絡み合いが観察された.Figure 1 (c)のひずみ12.0ではPAAm鎖が伸張され柔軟に変形する様子が現れた.このことよりDNゲルでは破断するまでにPAMPSからPAAmへと切断箇所が推移し,それぞれの特性が段階的に出現することが分かった.

Figure 1.

 Fracture process of DN gel.

Figure 2.

 Stress-strain curve and number of dissociated bonds in fracture process of DN gel.

次に,DNゲルの高強度化への高分子鎖長の影響を解明するためにPAMPS,PAAmの鎖長を変え,引っ張り計算を行った.Figure 3にPAMPS,PAAmそれぞれの鎖長である1本の高分子鎖を構成するモノマーの数を100から200へと変えた4つのモデルの引っ張り計算で得られた応力ひずみ線図を示す.PAMPSの鎖長のみを200に変えたモデルではPAMPSの鎖長が100の場合と比べて破断応力の上昇は観察されなかった.一方,PAAmの鎖長のみを200に増加させたモデル,PAAm,PAMPS両方の鎖長を200に増加させたモデルで破断応力が上昇した.また,4つのどのモデルも靭性は同様の値を示していることがわかる.まとめると,PAMPSの鎖長を長くしたモデルでは破断応力に変化は現れなかったが,PAAmの鎖長を長くしたモデルでは破断応力の上昇が観察された.よって,高強度化にはPAAmの鎖長が重要だということがわかった.

Figure 3.

 Effect of polymer chain length on stress-strain curve.

以上のことからDNゲルは伸張されると,密に架橋している剛直なPAMPSの切断が始まる.そして,2種類の高分子鎖が絡みあっているためPAMPS,PAAmが同時に力を受け,切断される.その後PAMPSの断片がPAAmに絡み付き大きな網目を形成するので,柔軟なPAAmが大変形し,高靭性を示す.このように2種類の高分子鎖が絡みあうことで低ひずみ領域でPAMPSが高荷重に耐え,高ひずみ領域でPAAmが破断を遅らせるという2つの特性が段階的に現れる.このことが高靭性を持ちながら強度が高くなる要因だと考えられる.このメカニズムは実験によって提唱されている破断プロセスとよく一致している [2].また,PAMPSは密に架橋し,剛直で緻密な網目を形成している一方,PAAmは疎に架橋し,柔軟な高分子鎖として働く.PAMPSの網目に絡みつきやすくなり,絡み合い点で力が分散され,広い範囲でPAMPSが荷重に耐え,破断応力が上昇した.

4 結論

本研究ではDNゲルの高強度メカニズムを解明するため,粗視化分子動力学法を用いて,その破壊ダイナミクスを検討した.その結果,PAMPSとPAAmの絡みあいによって,破断までにPAMPSからPAAmへと特性が段階的に現れることがDNゲル特有のメカニズムだと明らかにした.また,PAAmの鎖長を増加させることで PAMPSとPAAmの絡みあいが増加し,力が分散されるため,破断応力が上昇することを明らかにした.

参考文献
 
© 2015 Society of Computer Chemistry, Japan
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