2016 Volume 14 Issue 6 Pages 211-212
Molecular dynamics simulation of 4-n-alkyl-4'-cyanobiphenyl series (nCB) using the full-atom model was carried out. We used a force field that was fitting the dihedral angle parameter and the LJ parameters of the AMBER Force Field against nCB. The dihedral angle parameter is set to reference the quantum chemical calculation, and the LJ parameters were fitted to reproduce the experimental data. By using the modified force field, experimental data such as isotropic-nematic phase transition temperature and density were reproduced.
4-n-alkyl-4'-cyanobiphenyl (nCB)はシアノビフェニル基が棒状のメソゲンとして働く,代表的なサーモトロピック液晶である.nCBが示す特徴的な挙動として,メソゲンについたアルキル鎖の炭素数nの偶奇によって異なる物性を示すodd-even効果や,降温過程での相転移がIso-N-Sm-RN (Rentrant nematic)のようにネマチック(N)相がスメクチック相の下に再び現れるReentrant現象がある [1,2].これまで,nCBの分子構造と相挙動の関係について,計算化学的立場から様々なモデルを用いて研究が行われてきた [3,4].しかし,これまで全原子モデルを用いた分子動力学(MD)計算の研究例はほとんど報告されていない.nCBの分子構造と相挙動の関係をより詳細に見ていくには,全原子モデルでの取り扱いが必要と考えられる.そこで,我々は,全原子モデルを用いたnCB液晶のMD計算を行った.
本研究では,汎用力場であるAMBER力場 [5,6]を採用した.AMBER力場は主に生体分子に適した力場とされ,以下の計算項によって構成されている.
ここで,
AMBER力場をそのまま用いてnCBのMD計算を行うと密度・Iso-N相転移点などで実験値と大きく異なる結果が得られた.また,nCBの分子構造を確認すると,ビフェニルが平面構造をとっていることが明らかとなった.そこで,AMBER力場のねじれ項,ファンデルワールス相互作用項のパラメータのフィッティングを行い,その力場を用いて,nCB (n = 5∼8),100分子系に対してMD計算を行った.ねじれ項はMP2/6-31G (d)法で得られる内部回転ポテンシャル,ファンデルワールス相互作用項は密度の実験値をもとにフィッティングした.MD計算は150ns行った.
修正力場による計算から得られた密度の温度依存性とIso-N相転移点をFigure 1,2に示した.Figure 1,2から力場を修正することにより,密度の温度依存性・Iso-N相転移点は実験値と良い一致を示す.このことから,力場のねじれ項,ファンデルワールス相互作用項の修正がnCBの挙動を表すのに重要であったことが示唆される.また,相転移前後の構造を調べると,アルキル鎖のコンフォメーションが変化し,分子の異方性の増大が確認された.このため,相転移前後で密度が変化したと示唆される.さらに,nCBで指摘されている2分子間での特異な会合構造も観測された.以上のことから,本研究における修正力場はnCBの相転移挙動を再現していると言える.
Temperature dependence of the density of nCB (The dashed line is experimental value3).
Alkyl chain length dependence of experimental3(circle) and simulated (square) isotropic − nematic phase transition temperature of nCB.
本研究における全ての計算は,国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) 先導的物質変換領域(ACT-C)の支援の元,東京工業大学のTSUBAME2.5と自然科学研究機構 計算科学研究センターのスーパーコンピュータを利用して行った.