2016 年 15 巻 5 号 p. 177-183
カーボンナノウォール(CNW)の構造を透過型電子顕微鏡(TEM)で観測し,CNWの結晶子間の境界領域に折れ曲がったグラファイト構造があることがわかった.CNWの電子構造を紫外光電子分光(UPS)で測定し,高配向性グラファイト(HOPG)と比較した.HOPGと同様にCNWでも層間バンドが観測された.一方,カーボンナノチューブに見られるσ-π混成バンドが観測された.昇温脱離法(TPD)の測定から,重水素がCNWの主に境界領域に吸着することがわかった.CNWの境界領域の1つのモデルとして折れ曲がったコロネン分子を用いて水素吸着に関して第一原理計算をおこなった.オントップサイトとホローサイトどちらも折れ曲げ角が大きくなるほど水素の吸着エネルギーが大きくなった.NBO解析から吸着サイトの炭素の結合がsp2からsp3に変化するためだとわかった.