Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
An Attempt at Theoretical Calculation of Electronic Structure of model-DNA
Hiroyuki TERAMAEYuriko AOKI
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2016 Volume 15 Issue 6 Pages 219-220

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Abstract

As an attempt at the electronic structure calculations of the B-type model-DNA, (poly-(guanine) poly-(cytosine)) model polymers is performed by means of ab initio crystal orbital method adapting the screw axis-symmetry which results in great reduction of computational efforts. All sugar backbones and ions are included in the calculations. Energy band structures are calculated at 3-21G and 6-31G levels. The effective mass of hole shows a relatively large value while that of electron shows a smaller value which suggests electron conduction in the DNA backbones.

1 はじめに

Ab initio分子軌道法により,糖鎖とカウンターイオンまで含めたDNAの二重らせん構造について,量子化学計算を行って生体高分子としてバルク状態でのDNAの電子構造を求めることは古くから検討されている.

DNAの計算を分子軌道法を基に行う場合には,tight binding法を使用したエネルギーバンド計算による方法,いわゆる結晶軌道法がある.さらにDNAのようにらせん構造を有する一次元高分子はFigure 1に示したように,らせん角を利用することで,エネルギーバンド計算が行えるが,このような大規模計算はOtto, Clementi, Ladikによる先駆的研究 [1]と我々の先行研究 [2]は存在するが,基底関数や積分のカットオフ方法など種々の問題があり未だほとんどなされていないと考えられる.

Figure 1.

 Translational vector and helix angle of polymer.

実際に計算を行っていくモデルDNAについては,二重らせんモデルを考えている.DNA二重らせんは塩基配列,塩基組成,相対湿度,カウンターイオンの組成や濃度により,A, BまたはC型などを取る.一般には水溶液中で安定化するB型が多くの場合に見られ,生体内で最も一般的な構造であるため,本研究で考慮しているのもB型である.

本研究ではこれまで有限クラスターとしてしか取り扱われていなかったDNAを無限系として高速演算することにより,その電子状態と導電性の関係などを解析することを目的とした.

2 計算方法

一次元結晶軌道法を用いた計算を行う.結晶軌道法では,Bloch基底関数を用いる.   

ψ n ( r , k ) = s = 1 basis C sn ψ n ( k ) ϕ s ( r , k )

ここでrは電子の座標,kは波数ベクトルである.Bloch基底関数は単位セル中の各AOのBloch和で表される.   

ϕ s ( r , k ) = 1 2 N + 1 j = N + N exp ( i k aj ) χ s ( r ja )

k空間でのエネルギーは,以下のように表される.   

E elec 2 N + 1 = a 2 π π a π a n occupied C n * ( k ) { H ( k ) + F ( k ) } C n ( k ) d k

途中大幅に省略するが,実空間でのエネルギーの表現は次式で表される.   

E total 2 N + 1 = 1 2 j = N N r basis s basis ( H rs 0 j + F rs 0 j ) P rs 0 j + 1 2 j = N N A atom B atom Z A Z B | R A 0 R B j |

ここでH, F, Pは実空間での一電子ハミルトニアン,Fock,電子密度を表し,通常の分子軌道計算で用いられるものと同じである.ここでらせん対称性をポリマーが持っているとし,対称軸がz軸であるとすると,通常のp軌道の代わりにpxおよびpyを次式のように,   

p¯ x j = p x j cos ( ) + p y j sin ( )
  
p¯ y j = p x j sin ( ) + p y j cos ( )
とすることで小さいユニットセルを用いて計算可能となる.

基底関数は3-21Gおよび6-31Gを用い,最も小さいDNAモデルとして,二重らせん状態のグアニン-シトシンのペアのポリマー(poly-(G) poly-C))を計算した.10ユニットで1ターンとなるようにらせん角度は36度とした.隣接セル数については5としているが,6-31G基底でSCFの収束解が得られているため,ほぼ充分であると考えられる [3].

3 結果と考察

Figure 2に今回計算を行った (poly-(G) poly-(C)) の構造を示す.またFigure 3に得られた6-31G基底でのエネルギーバンド構造を示す.Figure 3において特徴的なのは,ナトリウムイオンが入っているためか,最低空 (LU) バンドの値が0点において0に近い値となっていることである.そこで0点におけるエレクトロンの有効質量を計算してみると2.29とかなり小さくなることがわかった.ホールの質量は-18.15とそれほど小さな値にはならないので,電子による伝導が期待できる.

Figure 2.

 View of structure of (poly-(G) poly-(C) model DNA.

Figure 3.

 The energy band structure of (poly-(G) poly-(C) model DNA at HF/6-31G level.

また最高被占(HO)バンドは他のバンドとかなり離れて存在しており,このことが何らかの物性と関係しているのではないかと推測される.

本研究においてはモデルDNAの電子状態計算をらせん構造を使用したエネルギーバンド計算により行った.今後はより多くのモデルについて計算を行っていく.

Acknowledgment

本研究はJSPS科研費 16K05666の助成によって行われた.

参考文献
 
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