2017 Volume 16 Issue 4 Pages 116-117
Lithium air batteries are attracting attention as next generation secondary batteries because powerful secondary batteries are required for an application of electric vehicles. In the lithium air battery, Li2O2 is the main discharge product decomposed into Li+ and O2 during charging, whereas electrochemically irreversible Li2CO3 and Li2O are also formed. The reaction phenomenon of decomposition of these products is complex and influences the over potential during charging. The by-products decomposition and surface structure of the electrode also change the over potential. Therefore, decomposition behavior of discharge products on a cathode electrode during charging is fundamental in developing a high performance lithium air battery. In this study, we carried out a first principles molecular dynamics method (FPMD) with different electronic state to analyze the relationship between charging condition and decomposition behavior of discharge products on the carbon surface at the atomic level. In particular, the influence of the surface structure of the electrode on the dynamics of decomposition of Li2O2 was studied.
次世代型の金属二次電池として注目されるリチウム空気電池では,充電時には陽極において放電析出物であるLi2O2がLi+とO2に電気化学的に分解される.しかしながら,カソード上での反応現象は複雑であり,グラファイトの表面上での分解反応の挙動によって充電電圧が変化しサイクル特性にも影響を与える.しかしながら,電極表面構造が,放電生成物の分解挙動へ与える影響については不明な点が多い.そこで,本研究では充電時のカソード電極における放電生成物(Li2O2)の反応挙動を第一原理分子動力学法を用いて解析し,電極表面構造が生成物の分解に与える影響について考察した.充電過程を模擬するには電位を考慮した計算が必要であるが,本研究では,放電析出物の安定性を簡易的に評価するために電気化学反応の素反応を想定し,系の電荷を変化させた計算を行った.また,自由エネルギー変化から充電電圧を見積もった.
電気化学反応を模擬するために,充電によりカソード極から移動する電子数に対応して系の電荷を変化させた第一原理分子動力学法シミュレーションを行った.放電析出物のモデルとしては,充電後期に残存すると考えられる(Li2O2)3の微小クラスターを想定した.電極モデルとして異なる面指数をもつグラファイトの薄層を三次元周期境界条件を課した単位セルに配置し,(Li2O2)3を0 Kで安定に吸着させた構造を初期状態として, NVTアンサンブルで300 fs ∼1000 fsのシミュレーションを行った.グラファイト表面としては, 表面構造の影響を考察するために,Figure 1に示すような,(001)面,(100)面,水素で終端した末端構造を考慮した.計算条件としては,量子計算には数値基底の密度汎関数法(DFT)を局所密度近似(LDA,PWC)で用いた.温度は300 Kで計算を行った.

Three carbon surface models with Li2O2.
(a) carbon (001) surface, (b) carbon (100) surface,
(c) carbon step models.
グラファイトの(001)面モデルと末端モデルにLi2O2を配置した.Figure 2にはLi+が2個生成する過程の電荷を+2とした際のシミュレーション結果を示した. (001)面ではLi2O2がLi+とO2に分解された.なお,Mulliken population 解析よりイオンと分子の生成を確認した.一方,末端構造モデルでは初期構造からLi2O2クラスターは若干構造変化を示したものの,検討した計算時間では安定に表面に吸着していた.また,(100)面モデルでもLi2O2クラスターは分解しなかった.この結果から,グラファイトの末端近傍では(100)面と比較し,Li2O2は分解が起こりにくい可能性がある.

Snapshots of unit cell at charge +2
from FPMD simulation. (a) carbon (001) surface, (b) carbon step model.
各モデルの初期構造から吸着エネルギーを求めた結果をTable1に示す.吸着エネルギーは(100)面モデル,末端モデル, (001)面モデルの順で大きくなった.このことからも,末端や(100)面に析出したLi2O2は分極した末端原子との強い相互作用により安定化されるため分解されにくく,充電電圧の増加やサイクル容量の低下をもたらすことと思われる.これらの結果は,生成物の分解に電極のミクロレベルでの表面構造が影響している可能性を示唆する.
| model | Adsorption energy[kcal/mol] |
| carbon (001) surface | −122.7 |
| carbon (100) surface | −239.8 |
| carbon step model | −130.8 |
次に,(001)面モデルのシミュレーションの自由エネルギー変化から充電電圧を求めた.充電電圧は,以下の式(1)を用いて計算した [1].
ここで,Gは系のポテンシャルエネルギー,Rは気体定数, Tは温度,Eはポテンシャルエネルギーである.この値に充電電圧を考慮すると,
リチウム空気電池の陽極を想定したグラファイト表面上に析出物のLi2O2を配置した構造に対して第一原理分子動力学法を適用した.グラファイトの末端や(100)面に析出したLi2O2はグラファイトとの相互作用により安定化されるため分解されにくい様子が観察された.