2017 Volume 16 Issue 4 Pages 106-107
By using the Z-index a useful algorithm for obtaining such "dormant graphs" was discovered, which systematically generates pairs of isospectral tree graphs, although mathematical rigorousness is not yet completely attained.
グラフGの特性多項式 PG(x) は,隣接行列をA, N行N列の単位行列をEとして
(1)
と定義される.数学では,その解の集合 {ε: PG(ε) = 0} = {ε}をGのスペクトルという.{ε}の等しいグラフは互いにisospectral (IS) あるいは cospectralと呼ぶ.最小の IS対として 1と 2, 木グラフでは 3と4 が知られている.
本研究の目的は,3と4のような木グラフのIS対を系統的に生み出すアルゴリズムの発見にある.その結果dormantという新しい概念が得られたが,ここでは新しく見出された幾つかの興味ある結果を紹介する.この問題に関する文献と予備的な議論については文献 [1] を参照してほしい.
著者は1971年に,グラフGに対する非隣接数 p(G,k) を使ってtopological index Z(Hosoya index)Z-数え上げ多項式 QG(x) を次のように提出した[2]. , 特に木グラフGに関しては, が成り立つので{ε}に頼らず,QG(x) の比較でIS関係を判断できる.更に
Z = QG(1)
なので,二つのグラフのZが異なれば,それらはISではないと判断できる.従って,第一段階として計算の簡単なZの比較だけでIS関係を先ず絞りこみ,しかる後にQG(x) の検討を行えばよいことになる.
下のグラフ5(E) は最小のendospectral graph (EG)として知られている.即ち,その点 u と v に辺をそれぞれ1本ずつ追加すると6と7が生じるが,それらはIS対となっている. 更に,u と v に追加するものを,1本の辺だけでなく任意のグラフ(でもでも可)としてもIS対が得られる.今回はZをかぎとして幾つかの発見があった.即ち,Eから点 u 及び v とそれに隣接する全ての辺を除いたグラフ 及び (predormant と呼ぶ) のZを求めると,互いに等しい.これまでに報告されている木グラフのIS対全てについて成立する.
上の例で,EGにはIS対を成長させる endospectral vertex がu と v の2個だったが,下のグラフ8のように,その中の2対の点 (u1, u2) と (v1, v2) からそれぞれ同時に同じグラフの対を成長させてIS対の得られる木グラフが数多く見つかった.更に一つの木グラフの中のn個の点の対からIS対を生成するグラフも多数発見した(現在n≦7).それを一般に,n-multiplet dormantと呼ぼう.上に紹介した5(E)は singlet dormant, グラフ8はdoublet dormantである.
つまり,endospectral graphは,dormantという新しい概念に包含されることが分ったのである.
下のグラフ9はこれまでに得られた木グラフとしては最小のdormantであり,既知のIS対 (3,4)を生成するtriplet dormant であることが示された.
更に,9は同時にquartet, sextet, heptet (septet) dormantとしても働くがn = 1,2,5,8,9…のdormantにはならないことも分った.