2017 Volume 16 Issue 5 Pages 129-130
Mullite has a complicated crystal structure in which double occupancy of metal atoms and oxygen vacancies take a random arrangement.Various attempts have been made to describe its structure,but it has not yet been fully described.The purpose of this study is to clarify that the random arrangement has regularity. Excluding arbitrariness,the arrangement of metal atoms and oxygen vacancies of mullite crystals of three compositions (1.58Al2O3,1.75Al2O3,1.95Al2O3 for 1SiO2) was randomly generated.Structural relaxation calculations of these models were performed,and their stability was examined.The wide distribution of the heat of formation obtained by the structural relaxation calculation was consistent with the composition.
ムライトは身近な実験器具である坩堝などの磁器に含まれている身近なものであるが,自然界においてその存在は非常にまれである.
ムライトの結晶構造は金属原子の二重占有サイトと酸素空孔サイトが不規則な配置を取っているため非常に複雑になっている.過去にムライトの構造を記述しようとする試みがあったが未だ完全に記述できてはいない.ムライトの平均構造が決定されて以降,その結晶構造を実際の実験でTEM,X線データに沿うようにシミュレーションを用いて超構造をくみ上げ,その構造から再びTEM像,X線データに出力すると高指数面の像,散漫散乱などの計算値と実験値の不一致が生じる. [1]これは,大型モデルを構築する際の実験データの解釈に恣意性が入り込み,酸素空孔,金属二重サイトにおけるAlとSiの配置の仕方に不自然が生じたためだと考えられる.
The mullite calculation model.
本研究の目的は,恣意性を排除した方法で大型結晶を再現し,ムライト結晶中の金属原子の二重占有サイトと酸素原子の空孔サイトの無秩序の中の秩序を明らかにすることである.
ムライト結晶の巨視的領域において金属原子(Al,Si)と酸素空孔の配置候補構造をランダムに発生させた(Figure 1).それらの候補構造には,以下のルールを設けてある.
The distribution of the heat of formation of three compositions:(a) 1.58Al2O3, (b) 1.75Al2O3, (c) 1.95Al2O3 for 1SiO2.
①CIF (Crystal Information file)から読み込んだデータを用いて,酸素空孔間ベクトルの最短に相当する3 × 3×8格子.
②セルの端部分の原子配置は,周期境界条件に矛盾しないこと.
③ムライト組成:Al2(Al2+2XSi2-2X) O10-X に従う.
これらのルールを踏まえて,3つ組成の計算モデル(1SiO2 に対して1.58Al2O3,1.75Al2O3,1.95Al2O3)をつくった.
ランダム発生させた多数の候補構造を構造緩和計算,つまりエネルギー極小化計算を行い検討した.構造緩和計算及び二体相関関数の計算にはMaterials Explorer (富士通)を使用した.構造緩和計算に関して,温度は298 K,時間刻み5fsで3ps実施した.計算モデルには三次元周期境界条件を適用.(1)式は本研究で使用したポテンシャル関数,CMAS94 [2]である.
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ここで rij は原子間距離,f は4.1814 kJÅ −1mol−1の標準力,そしてq,A,B,Cはそれぞれ有効電荷,反発半径,ソフトネスで決まるパラメータ,イオンのvan der Waals係数である.
構造緩和計算によって現れた生成熱の広い分布は組成に沿ったものとなった(Figure 2).ボルツマン分布計算から,生成熱の低い分布帯のモデルを用いて解析を行うこととした.
二体相関関数の結果は,酸素原子と金属原子,酸素原子同士の相関はほぼ同じであったが,金属原子同士の相関は組成によって異なっていた.
今後はサンプル数を増やし,X線データの再現など実際の実験値と比較することでムライト結晶の無秩序の中の秩序を見出すことができるのではないかと考える.