2017 年 16 巻 5 号 p. 139-140
Although not completed yet, mathematical foundation for the existence and algorithm of finding the dormant tree graphs is being pursued.
与えられた木グラフのいくつかの頂点から同時に枝を成長させてできたグラフの特性多項式の解 (spectrum) を議論する.1’と1”はそれぞれ3個のsprout (芽)をもつように1から派生したグラフだが,Gがどんなグラフであっても同じspectrum を与える.例えばGが1本のedgeであれば,生じたグラフ2と3が isospectral (IS) trees である.それらのZ-インデックス[1]も当然等しく, この場合は17になっている.このような性質をもつグラフ1はtriplet dormantであるという.Gをのように成長させて行けば,IS対もどんどん成長して行く.
実は,2と3は最小のIS tree 対として知られていたが,上述のように1から派生することは今回初めて分かった.またdormantという語は元来「冬眠の」という形容詞だったが,この名詞的な使い方は著者の独断的提案である.前報に紹介したが,1はquadrupletにもsextupletにもheptapletにもなり得る.Dormantが大きくなれば,multiplicityも急速に大きくなると予想される.
従来の理論では,IS対の成長はsinglet dormant止りで,それはendospectral tree と呼ばれていた.その最小のグラフは 4 である.4の白丸のuと vに1個ずつGをつなげるとIS対が生成することしか知られていなかったが,これも何通りかのmultiplet dormant になることが本研究で分かった.
このように,dormantは従来の endospectral graph を包含する新概念である.しかし,数学的にはまだ未完成なので,一つずつその穴を埋めて行きたい.先ず singlet dormant から.
グラフDとGが点uを共有して新しいグラフ GuD ができると,そのZ数え上げ多項式QGuD(前報参照)は次式のように表される.
QGuD= QHQD+ QGQDΘυ − QHQDΘυ = QHQD+ (QG − QH) QDΘυ (1)
次に,Dのu以外の点vにGを付加させて GvD を作ると,QGvD は次式のように表せる.
QGvD= QHQD+ (QG − QH) QDΘv (2)
GuD とGvDがIS対であることは,即ちQGuD = QGvDである.すると,(1)と (2) より,QDΘυ = QDΘvが必要となる.また逆も真である.ここでQDΘυ は,グラフDから点uとそれに隣接する全ての辺を除いたグラフ (predormant) DΘuのZ数え上げ多項式である(上図参照).
具体的に,4をDとすれば,GuD, GvD, DΘu, DΘv 等は次のようになる.
DΘu と DΘv のQもZも等しいことが示され,GuD とGvDがIS対であることが説明される.
上のような議論をdoublet dormantへ拡張することによって,その数理を証明することができる.しかし,triplet dormant以上になると,場合分けが複雑になり,未だ数学的な完全性を得るところまでには至っていない. ところが,数学的には不完全であっても,「Zを水先案内に使いQで結果の判定を行う」という戦術で,これまでに数十種のmultiplet dormant とそれらの間の興味ある関係を知ることができた.数学的な補てんを引き続き継続中である[2].