Journal of Computer Chemistry, Japan
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Letters (Selected Paper)
Evaluate of Acylpyridinium Cations in The Reactivity and The Stability
Shibata YUSUKEYoshihiro HAYASHISusumu KAWAUCHI
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2019 Volume 18 Issue 5 Pages 233-235

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Abstract

Among ester synthesis methods, there is a method using a pyridine derivative as a catalyst, and the esterification reaction rate may be increased through a highly active acylpyridinium cation intermediate. It has been reported that the stability of acylpyridinium cations correlates with the reaction rate of esterification. In this study, we try to clarify the reason for the correlation between the reaction rate and the stability, then we investigate the relationship between the stability and structures of acylpyridinium cations. As a result, we found that the stability largely depends on the electronic donor property of the substituents, and acylpyridinium cation may act as an effective catalyst for esterification when the substituents have strong donor property at positions 3, 4, 5 of the pyridine ring.

1 序論

エステル合成法として,ピリジン誘導体を触媒とする方法がある. 高活性なアシルピリジニウムカチオンを経ることにより,エステル化の反応速度が大幅に上がると考えられている(Scheme 1). [1]

Scheme 1.

 An example of esterification reaction using acylpyridinium cations

先行研究において,エステル化反応速度はアシルピリジニウムカチオンの安定度に依存することが報告されている. [2]

アシルピリジニウムカチオンの安定性が向上するような置換基およびその理由が明らかになれば,効率的なエステル合成のための触媒設計に繋がるだろう.

本研究では密度汎関数法により,(1)エステル化反応速度とアシルピリジニウムカチオンの安定性の相関理由,(2)アシルピリジニウムカチオンの安定性と置換基のドナー性との相関について検討を行った.

2 計算方法

量子化学計算にはGaussian 16を用いた.計算手法はωB97X-D/6-311+G (d,p)を用いた.反応経路の評価に用いたギブズエネルギーは標準状態(298.15K, 1.00 atm),気相条件下で求めた.アシルピリジニウムカチオンの安定性はScheme 2の反応熱(ΔH)を求めることで評価した.また,自然結合軌道(NBO)解析により軌道間相互作用の計算を行った.

Scheme 2.

 A method for evaluating the stability of acylpyridinium cations (ΔH) [2]

3 結果と考察

3種類のピリジン誘導体に対して,ΔHおよびScheme 1におけるエステル化反応経路を求めた.結果をTable 1Figure 1に示す.

Table 1.  Calculation results of ΔH
Figure 1.

 Calculation results of esterificatioin using pyridine derivatives

アシルピリジニウムカチオンの生成後,エステル結合形成を経て進行する経路が得られた.エステル化反応速度およびΔHに相関が見られる理由として,ΔHが負に大きいほど1段階目の過程の平衡がアシルピリジニウムカチオン生成側に偏り,濃度効果により2段階目の過程の反応速度が増加するためだと考えられる.またΔHの大きさがピリジン誘導体の求核性に対応していると考えられ,ΔH が負に大きいほどTS1のエネルギーが低下することも理由として推察される.

次に,アシルピリジニウムカチオンの置換基と安定性(ΔH)の相関を調べるために,14種類のアシルピリジニウムカチオンに対してNBO deletion法を用いた.ε1(置換基からピリジン環への電荷移動による安定化)およびε2(ピリジン環から置換基への電荷移動による安定化)を求めることでドナー性εを評価した(Figure 2).結果をFigure 3に示す.

Figure 2.

 Evaluation of donor property by substituents

Figure 3.

 Results of evaluation of donor properties

Figure 3より,置換基によるドナー性εおよびΔHには概ね相関が見られ,εが大きいほどエステル化の反応速度が上昇することが示唆された.置換基からの電子供与によりアシルピリジニウムカチオンが安定化されΔHが負に大きくなると考えられる.

εの増加が見られる置換基の特徴として,ピリジン環の3から5位にドナー性の強い置換基が存在し,アミノ基の平面性が保たれる場合が挙げられる(Figure 4).

Figure 4.

 Examples of acylpyridinium cations with large ε

また,Figure 3の赤丸で囲まれた点のように,置換基に芳香環が存在する場合や2もしくは6位に置換基が存在する場合においては相関から外れ,ΔHが正に大きくなる傾向が見られた.以上よりエステル化反応速度を上昇させるためには,ピリジン環の3から5位に電子供与性の強いアミノ基を多く有するピリジン誘導体が有効であると考えられる.

謝辞

本論文の計算は東京工業大学のTSUBAME3.0および自然科学研究機構計算科学研究センターのスーパーコンピュータを用いて行った.また,研究費を補助していただいたJST CREST (JPMJCR1522)及び,JSPS科研費 (JP17K17720) に深謝する.

参考文献
 
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