Journal of Computer Chemistry, Japan
Online ISSN : 1347-3824
Print ISSN : 1347-1767
ISSN-L : 1347-1767
Contribution in Memoriam
In Memory of Mr. Senda with Winmostar
Tadayosi YOSHIMURA
Author information
JOURNAL FREE ACCESS FULL-TEXT HTML

2022 Volume 21 Issue 3 Pages A24

Details
Abstract
Translated Abstract

千田さんを偲ぶとWinmostar関連業績が偉大である.分子モデルの設計・描画となると,1982年に私の個人的な企画で立ち上げた「化学PC研究会」会報で「MOLDA の分子モデル」BASICプログラムを作成・公開した故吉田弘氏が思い浮かぶ.現在,「日本コンピュータ化学会」なる学術団体となれたのも,この学会で分子モデル設計という分野が育ったことにある.

この学会の後継者としたいと思っていた矢先2005年に,吉田氏を我々は失って,この分野のヒーロー的業績を追悼した.MOLDAで描いた分子モデルを化学教育用に使っていると,Winmostar試供版を使わせてくれたのが千田範夫氏であった.彼を親愛を込めて「千田さん」と呼ぶことにする.

千田さんは,出光興産株式会社勤務時代から,我々の学会で分子モデル設計のソフトを開発・報告していたが,定年退職した2007年に,テンキューブ研究所を開業し,本格的にWinmostarの機能充実に専念された経緯をよく聴いている.彼の優れた業績に報いたいと,2011年に「日本コンピュータ化学会・功労賞」を受けていただいた.

千田さんと化学教育の分野で何か一つやりたいなと思ったのが,3Dプリンタの利用であった.3Dプリンタの出力データがSTLだということで,Winmostar機能にそのデータ出力をアップしてもらい,報告したのが「3Dプリンタ用ファイル作成のためのWinmostar機能の付加」(Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol.15, pp.7-11 (2016))である.さらに,3D分子軌道モデル(図参照)を出力できるようになり,「WinmostarのMOPAC計算による分子軌道モデルの3Dプリンタ用STLファイルの作成」(Journal of Computer Chemistry, Japan, Vol.16, pp.22-27 (2017))を共著で報告した.私にとって,目に見えない分子を3Dモデルで触って見ることができる化学教材を世に出すことができたのは千田さんのお陰である.これは楽しい仕事であった.

Fig. 1

. Photos of the 3D molecular orbital model, LUMO (left) and HOMO (right) of ethylene.

千田さんは,紙テープ時代から生き残る,団塊世代の天才プログラマーであった.千田さんとの思い出を語ることで,感謝の意を表す.有難うございました.

 
© 2022 Society of Computer Chemistry, Japan
feedback
Top