It is known that it is possible to develop a chemically intelligent robot that can perceive spatial extent using the BZ reaction. If the BZ reaction can be used for learning, there is a possibility of developing a chemically intelligent robot that can make complex judgments about situations like living organisms. In the physical reservoir calculation, it is possible to construct a learning system using a material system, so in this study, we build a physical reservoir calculation using the BZ reaction and confirmed that learning is possible. The physical reservoir computation was capable of performing tasks such as time series prediction and speech recognition. BZ reaction, nonlinear chemical reaction, reservoir computing, time series prediction, speech recognition
It is known that it is possible to develop a chemically intelligent robot that can perceive spatial extent using the BZ reaction. If the BZ reaction can be used for learning, there is a possibility of developing a chemically intelligent robot that can make complex judgments about situations like living organisms. In the physical reservoir calculation, it is possible to construct a learning system using a material system, so in this study, we build a physical reservoir calculation using the BZ reaction and confirmed that learning is possible. The physical reservoir computation was capable of performing tasks such as time series prediction and speech recognition. BZ reaction, nonlinear chemical reaction, reservoir computing, time series prediction, speech recognition
代謝反応をモデル化した化学反応として知られているBZ反応を利用することで,空間の広さを知覚する化学知能ロボットの開発が可能であることが知られている.また,BZ反応に学習能力があれば,より複雑な判断を可能とする化学知能ロボットの開発が可能である.物理的な媒体を利用し学習をおこなう物理レザバー計算 [1, 2]が知られているが,これを利用することで,より複雑なふるまいを可能とする化学知能ロボットの開発が可能となる.BZ反応を利用した物理レザバー計算は,シミュレーション上で可能であることが示されている [3]ため,本研究では,実際に実験系において物理レザバー計算を構築し,簡単な時系列情報の推定が可能であることを検証する.
一般的にBZ反応のパターン形成を観察するため,「金属触媒」,「酸」,「酸化剤」,「還元剤」の4種を混合した後,シャーレなどの平面に広げる方法が知られているが,この方法では反応場が擾乱に対して不安定である.そのため,本研究ではLaserらの実験系 [4]を物理レザバー計算用に改良して利用した.BZ反応を利用した物理レザバー計算の評価をするために,時系列情報の予測,音声認識タスクを課した.時系列情報の予測タスクでは,物理レザバーに対し一定期間時系列情報の入力を与え,その後の時系列を予測させた.対象とする時系列情報は,矩形波,のこぎり波を選んだ.音声認識タスクでは,被験者1名による"zero","one"の2種類の発話の分類を課した.音声情報はコクリアグラムに変換された後,PPM信号に変調したデータを利用した.トレーニングに12データ,テストの3データ利用し,交差検証によって分類性能を評価した.反応場の劣化による影響を除くため,時間方向にハイパスフィルタをかけた.また,カメラのノイズの影響を除くため,出力には平均化フィルタをかけた.
矩形波およびのこぎり波を予測した結果のグラフを図1,2に示す.グラフ横軸は時間,縦軸はレーザーのpowerであり,青線が実際の矩形波の値,オレンジの線が予測値である.矩形波の予測では,実験開始ごおよそ2分から6分に得られた出力を用い学習を行った.それ以降は,自律的に時系列の予測がおこなわれ,約4分間元の矩形波に一致した値が出力された.出力にノイズが含まれるものの,時系列の概形をとらえている様子が確認された. また,のこぎり波の予測では,実験開始からおよそ1分30秒から5分30秒にえられた出力を用いて学習をおこなった.学習後1分程度,ノイズが多く含まれるが元の波形の概形にそった出力が得られている様子が確認された.その後,徐々に減衰し,予測が外れる様子が確認された.およそ7分以降では,実際のノコギリ波の倍の周期に近い波形が出力された.音声認識タスクについて図3に示す.移動平均の値を変更しながら学習を行った結果,誤り率が最低で約0.06となった.
Prediction about square wave.
Prediction about sawtooth wave.
Result of speech recognition.
矩形波・のこぎり波の予測が可能であったことから,単純な周期的時系列の予測は可能であることが示された.また,適切にモジュレーションした情報を入力し,出力をフィルタリングすることで,音声認識が可能であることが示された.のこぎり波は,一定時間後大きく予測が外れている様子が確認されたが,これは,時間とともに溶液条件が変化したことにより,基本周期が長くなったためであると考えられる.音声認識タスクでは,音声情報が十分に反映された反応場の状態を利用したことで学習率が高まったと考えられる.
本研究では,BZ反応を利用した物理レザバー計算を実験系において構築し,時系列情報処理をおこなった.実験の結果,BZ反応を利用した物理レザバー計算では,矩形波,のこぎり波の時系列予測をおこなうことが可能であり,また,限定的な条件において音声認識をおこなうことが可能であった.これらの結果から,BZ反応を利用した物理レザバー計算は,限定的な条件において時系列情報の処理に有効であること示された.今後本研究で得られた知見を利用することにより,化学反応を利用した環境適応性の高い知能ロボットの開発への貢献が期待される.