Journal of Computer Chemistry, Japan
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3Dプリンターによる分子キャビティーの構造解析
戸澤 理詞玉井 良則
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電子付録

論文ID: 2015-0021

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抄録

立体規則性高分子の単結晶において,分子鎖間に「分子キャビティー」と呼ばれる空孔が生成する系があり,その構造を制御することにより,特定の分子を分離・回収する高性能な分離膜としての利用が期待されている.分子キャビティーの構造を解明するために様々な研究が行われているが,複雑なキャビティーの構造を立体的・直観的に把握することは困難である.そこで,本研究では,3Dプリンターを用いてキャビティーの立体モデルを作成することで,構造の理解を深めることを目的とする.分子キャビティーを持つシンジオタクチックポリスチレン(s-PS)のδe型,ε型及びS-I型を対象として,分子動力学(MD)シミュレーションを行い,分子キャビティーの構造を再現した.得られたデータを3Dプリンターで利用可能な構造データに変換し,分子キャビティーの立体造形モデルを作成した.δe型について,b軸方向及びac軸方向につながるチャネルを再現したところ,気体分子が拡散しやすいac軸方向につながるチャネルの方が太くて短い様子が十分に再現されていた.一方ε型とS-I型については,それぞれ,円筒型とジグザグ状のチャネルが得られた.さらに,これらのモデルに気体分子を挿入した系について解析を行い,気体分子が跳躍運動をしている瞬間を3Dモデル化することにより,結晶構造と気体の拡散様式の関係を直観的にとらえることに成功した.

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© 2016 日本コンピュータ化学会
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