抄録
本研究では,注意欠如多動症(ADHD)および自閉スペクトラム症(ASD)の特性と診断の両面から,起業行動との関連を検討した。調査1では,起業家と非起業家を対象にWeb調査を実施し,ADHDおよびASD特性を測定した。ロジスティック回帰分析の結果,ADHD特性の多動性・衝動性が起業行動と有意に関連していた。調査2では,調査1で得られた結果が,臨床的に有意な特性を有する人々にも再現されるのかを検証するため,調査1とは異なる調査参加者を対象に,ADHD・ASD診断の有無を尋ねて分析を行った。その結果,ADHD診断に加えてASD診断も起業行動と有意に関連していた。これらの知見は,発達障害に関わる特性や診断が起業行動に一定の影響を及ぼす可能性を示している。本研究では,日本という特定の文化的・社会経済的文脈における特異性を踏まえ,国際的な比較臨床心理学の観点から考察した。