大日本窯業協會雑誌
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セメント硬化促進劑の研究 (第1報)
モルタルの耐壓力とセメント水混合物の石灰溶出量とに及ぼす諸添加物の影響
近藤 清治鈴木 信一
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1936 年 44 巻 519 号 p. 159-166

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抄録

(1) 某社製燒塊粉末及び之に石膏2.5%を混和したセメントを用ゐ, 軟練モルタルの耐壓力に與ふる添加物の影響を求めた。但し水セメント比は0.60, セメント砂比は1:3, 供試體の大さは直徑5cm, 高さ10cm, 添加量は多くは1-5%である。添加物は硫酸鹽12種, 硝酸鹽6種, 鹽化物12種, 臭化物5種並に酸化鐵, 水酸化鐵, 水酸化バリウム, 珪弗化ソーダ, 安息香酸, 醋酸ソーダ, 炭酸アンモニア, 燐酸鐵である。材齡は3-28日だが稀にオートクレーブ加熱後の強度を測定した。
尚ほ燒塊粉末及びセメントにも10種の鹽類を多くは1-5%添加し, 之に10倍の水を加へ30℃の恒温に於て15分乃至5時間振盪した後に石灰溶出量を測定した。
(2) 燒塊粉末に於ては硫酸銅, 硫酸マンガン, 鹽化銅, 安息香酸, 珪弗化ソーダ等を除き大多數の化合物が早期強度を増加した。
(3) 石膏の入つたセメントでは鹽化鐵が著しく早期強度を増加し, 鹽化鉛, 鹽化銅以外の鹽化物は總て有效であつた。此他臭化石灰, 炭酸アンモニア及び硫酸鐵も強度を増加したが, 多數の硫酸鹽類, 硝酸鹽類, 酸化鐵, 水酸化鐵, 燐酸鐵等は強度を害した。即ち石膏入セメントの場合に在ては大多數の化合物が強度を害した又有效な化合物でも強度増加率が低かつた。
(4) 添加化合物の陽イオン及び陰イオンと其強度に對する影響との間には明かな規則性が見られない。
(5) 以上の結果を國吉五六氏がセメント規格の方法で試驗せられた結果と比較すると著しい矛盾又は差異を認める。即ち水量に依て此影響が變はることが判かる。
(6) 石灰溶出量と強度との關係は十分明かでない。
本研究は財團法人手島工業教育資金團から研究費の補助を受けた。著者等は該財團に對して衷心感謝するものである。

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© The Ceramic Society of Japan
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