大日本窯業協會雑誌
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セリット部分に關する研究 (第4報)
5CaO・3Al2O3-2CaO・Fe2O3系の研究
山内 俊吉
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1937 年 45 巻 537 号 p. 614-631

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抄録
第3報と同樣の理由で5CaO・3Al2O3-2CaO・Fe2O3系について顯微鏡的及びX線的に研究した。
試料は次の樣に16種のモル比に調合し之等を各々1300, 1350℃及びそれ以上の温度で熔融したものを急冷及び徐冷したものである。
試料の種類と調合分子比表
之等實驗の結果は次の樣である。
(1) 2CaO・Fe2O3と5CaO・3Al2O3は相互に有限混溶度の固溶體を作る。
(2) 之等固溶體の溶媒の混溶度は温度の上昇と共に増加する。
(3) 1350℃で焼成したNo. 13-19, 1300℃で焼成したNo. 13-17の範圍の試料は皆一つの固溶體系に屬し之等のX線廻折像は皆2CaO・Fe2O3と同型をなす。 即ち2CaO・Fe2O3は5CaO・3Al2O3をその結晶格子内に溶解してゐることが分る。 その限界混溶度は2CaO・Fe2O3 1モルに對し5CaO・3Al2O3凡そ0.5モル位である。
(4) 又逆に5CaO・3Al2O3も亦その結晶格子内に2CaO・Fe2O3の微量をとかし5CaO・3Al2O3型の廻折像を與へる一つの固溶體を形成する樣である。
(5) 之等調合物の中間No. 20以上からNo. 28前後迄の焼成試料中には2CaO・Fe2O3型と5CaO・3Al2O3型との2種の固溶體が混在してゐる。
(6) 之等2種の固溶體は顯微鏡的に共融點をもつてゐる樣である。
(7) 2CaO・Fe2O3型固溶體中最大混溶度をもつNo. 18-20の格子面間距離dは3CaO・Al2O3-2CaO・Fe2O3系に於て3CaO・Al2O3がそのまゝの形で2CaO・Fe2O3にとける最大限の2CaO・Fe2O31モルに封し3CaO・Al2O30.25モルの試料のd及5CaO:Al2O3:Fe2O3燒成試料のdと大體一致し4CaO:Al2O3:Fe2O3焼成試料のdまでは到達しない。
終りに臨み始終御懇篤なる御教導を賜はつた恩師東京工業大學教授近藤清治博士並に本實驗を熱心に援助された近藤教授研究助手小西幸平氏に對し深甚の感謝を捧げる。
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© The Ceramic Society of Japan
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