窯業協會誌
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各種セメントの化学抵抗性に関する研究
特に高炉セメントの化学抵抗性の改善
近藤 連一山内 俊吉
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1954 年 62 巻 701 号 p. 656-665

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抄録

各種の型のセメントのモルタル供試体を硫酸マグネシウム2%溶液に浸漬した場合の化学抵抗性について試験し, 次の結果を得た。
1) アルミナセメント, 耐硫酸塩. 低熱ポルトランドセメントは抵抗性が明らかに優れている。
2) 高炉セメント, シリカセメントは普通, 早強ポルトランドセメントより常に必ずしも抵抗性が大とは云えず, 製造に際して技術上の注意が望ましい。
3) ポルトランドセメント, 高炉セメント並にシリカセメントは, SO3含有量が2-4%程度に達するまで, 石膏あるいは無水石膏等の添加を増して抵抗性を向上させることができる。
4) ポルトランドセメントに微粉砕したスラグを添加したセメントはポルトランドセメントに比べて供試体内部は侵され難いが, 表面はいちぢるしく作用されて膨脹し, 大亀裂を生じた。
5) 高炉セメントの抵抗性の改善に関して次のような条件を明らかにし得た。すなわち, 石膏類の添加量を高めること, 並びにスラグ量は60%程度までは多い方が良く, 特にスラグ量30%程度の場合は, スラグが普通のセメントの粉末度程度以上に細かくならないことが望ましい。このようにして侵蝕性溶液に接触した表面に緻密で安定な保護層を生じ, 内部も安全に保つことを可能にする。
6) コンクリート工事に, スラグ石膏混合材をセメントの一部に置換して用いると, 化学抵抗性の殊に優れた構造物の得られることが知られているが, これはこの混合材がセメントより粗く粉砕されているのと, 予め石膏が加えられているのによるようである。
7) 石膏スラグセメントの供試体は, 表面は侵されて細かい亀裂を生じたが, その変質層は薄くて内部はほとんど作用されなかった。

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© The Ceramic Society of Japan
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