窯業協會誌
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高温における粘土質原料の流動変形に関する研究
鈴木 弘茂京田 洋山内 俊吉
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1958 年 66 巻 746 号 p. 45-52

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抄録

耐火物原料の高温での物理的性質は, 恒温, 恒圧下での流動変形 (Flow) を測定することによりその一面を最もよく研究し得ると考えられる.
このような観点から再結晶質炭化珪素棒を組合わせて1550℃までの極めて高い温度で, 粘土質原料に対して目的の測定を行い得る装置を試作し測定方法を確立した.
そして本装置を用いて, 2, 3種の粘土質原料およびそれにアルカリ金属酸化物, アルカリ土類金属酸化物などを添加した試料で実際の測定を行った. 耐火粘土焼結体は充分に高い温度では粘性的あるいは塑粘性的流動性を生ずるが, 一定速度に達した時のその流動速度は大体荷重に比例することが判ったので, リリーの式を準用してその塑粘性係数を算出してこの現象の概様を数値的に表示した.
カオリン系原料であるミズウリーフリントクレーおよびジョウジアカオリンについて, このようにして求めた1500℃での塑粘性係数はいずれも約1012ポイズの桁のものであることが判った. この塑粘性係数は, 同一系統の粘土では夾雑物の多寡による化学組成にもとづき, 1500℃付近の高温では, そこに生じたガラスの量およびその性質に影響されるところが大ぎい. その夾雑物あるいは添加物としては本実験研究の範囲では陽イオンのイオン半径および原子量の小さいものが, 塑粘性係数をさげる傾向が認められ, 従来のガラスにおける定説が一応適用されることが判った. 原子価の影響は大きく2価のものは一段と塑粘性を下げることが判った. すなわちアルカリ殊にK2Oの高温での影響は, 本研究の場合では予想外に小さく, アルカリ土類のBeOやMgOの影響は著しいことを認めた. しかし添加量によっては, その効果は必ずしも一律に論じ得ないという例も認められた.
本研究を行うに当り, ガラスの伸長法による粘性係数を測定し援助を賜った, 電気通信研究所の渡辺宗男氏, 東工大山内研究室の桑山則彦, 田村四郎, 古丸勇ら諸氏に感謝の意を表し, またレオロジカルな現象の解釈ならびに学術用語の使用法などについて有益な助言を賜った東京工業大学助教授素木博士に感謝する.
本研究の一部, は昭和31年11月に化学関係学協会連合研究発表大会で発表し, 本装置については昭和30年11月に日本材料試験協会学術講演会で報告した.

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© The Ceramic Society of Japan
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