窯業協會誌
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起電力法によるガラスの微構造変化の検出
阿部 良弘成瀬 省鈴木 克元
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1968 年 76 巻 880 号 p. 421-427

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抄録

加熱過程で分相, 結晶化などの微構造変化を起すガラス試験片と, かような変化をすでに完了して熱的に安定化された標準試験片とを密に接触させ, これに白金電極を組合せて構成した電池系が昇温過程で発生する起電力を測定した. この測定結果から得られた起電力-温度曲線を同じガラス試料に対する電子顕微鏡観察とX線分析結果と対照し, 起電力変化と微構造変化との対応性を検討した.
その結果, 起電力-温度曲線に現われる変化によって分相および結晶化の核形成をも含んだ微構造変化の全過程の進行状態を読みとることのできることが明らかとなった. とくに, 分相粒子の成長の前段階である分相のための核形成過程は, 電子顕微鏡による検出がほとんど不可能であるのに対し, この起電力法によれば, その温度域できわめて顕著な起電力上昇が観察されることは, 起電力法のもっとも注目されるべきひとつの特長である. 以上により, 起電力法は, ガラスの加熱過程における微構造変化の全過程に対する連続的な検出手段として十分に役立つものであることが実証された.
さらに, 分相または結晶化のための核形成の進行につれてガラス中の酸素イオン活量が増大し, また, 分相粒子あるいは結晶子の成長につれて酸素イオン活量が減少すると考えることによって, 測定された起電力変化とガラス中の微構造変化との対応を理解することができることを明らかにした.

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© The Ceramic Society of Japan
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