窯業協會誌
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成因の異なる石英の石灰との水熱反応性
鈴木 一孝浅川 邦治土田 幸宏伊藤 祐敏福尾 券一
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1977 年 85 巻 985 号 p. 440-447

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抄録

チャート岩 (珪石A), 砂岩 (珪石B) および変成岩 (珪石C) 質原料を試料とし, これらは粉砕, 塩酸処理, 水洗, 乾燥を行い, CaO/SiO2モル比が0.8になるようCa(OH)2と混合した. この試料に対し, オートクレーブの飽和水蒸気圧下において160℃および180℃で0.5, 1, 2, 4, 6, 8および16時間水熱処理を行った. 反応率は, 結合したCaOとSiO2の全CaO, SiO2量に対する比で与え, かつt/t0.5値はそれらの比から求めた. これらの実測して得たt/t0.5と [1-(1-α)1/3]n=K(t/t0.5) の式から計算して求めたt/t0.5を比較することによって, この水熱反応はCaO/SiO2比の大きいlath状組織の中をCaOが拡散することにより進むことを結論した.
反応の初期では繊維またはlath状トバモライトがすべての試料に生成し, 2-4時間後には葉状結晶が試料Aに, また板状結晶が試料Cに生成した. しかし試料Bにはlath状, 繊維状トバモライトがえられたのみであった.
圧縮強度を円柱形水熱合成体について測定した. 葉状結晶を生成する珪石Aは最強強度を示し, 珪石Cは板状組織を生成してそれより低い値を示した. 珪石Bは反応をおくらせ, 強度を増すのには効果が少なかった.
強度に効果をもたらすのは, 珪石の水熱反応においての反応性と, 生成する組織であることが結論され, 珪石の反応性においてC>A>Bの順に低くなることはそれらの湿潤熱の大きさの順B>A>Cと関係があり, それらは格子歪みと関係があることが推測された.

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© The Ceramic Society of Japan
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