窯業協會誌
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各種フッ素雲母系における層間 (Na, K) イオンの固溶性と固溶体の膨潤特性
西川 直宏北島 圀夫浅賀 喜与志大門 正機近藤 連一
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1980 年 88 巻 1016 号 p. 204-212

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抄録

フッ素四ケイ素雲母系固溶体 [(NaxK1-x)Mg2.5Si4O10F2] 及びフッ素ヘクトライト系固溶体 [(NaxK1-x)1/3Mg8/3Li1/3Si4O10F2] (0≦x≦1) の合成を試み, その固溶限界, 各固溶体の熱的安定性, 結晶析出過程及び膨潤特性について, 粉末X線回折法, DTA及びSEMを用いて検討した. 更に前報のテニオライト系固溶体 [(NaxK1-x)Mg2LiSi4O10F2] との比較検討も行った.
フッ素四ケイ素雲母系及びフッ素ヘクトライト系は, テニオライト系と同様に限定固溶系をなし, 二つの型の固溶体雲母 (K型固溶体, Na型固溶体) が生成する. これら2相の固溶体雲母が共存する組成領域は, フッ素四ケイ素雲母系, テニオライト系, フッ素ヘクトライト系の順に広がるが, この相違は主にK型固溶体側で起こる. またNa型端成分へのK+イオンの固溶限界は, いずれの系においても, 約15mol%程度であった.
各系の結晶析出過程は, テニオライト系と著しく異なり, フッ素四ケイ素雲母系におけるNa型固溶体は, 準安定相と考えられ, 平衡的な条件下では, K型固溶体, フッ素マグネシウムリヒテライト及びα-クリストバライトに分解する. 他方, フッ素ヘクトライト系においては逆に, まず非平衡的にフッ素マグネシウムリヒテライトが生成した後, これがNa型固溶体に変化する.
膨潤性を示すのは, いずれの系でも, Na型端成分とNa型固溶体であり, かつ膨潤度は, K含有量の増加とともに減少した. なお, この膨潤度の減少傾向は, フッ素ヘクトライト系, フッ素雲母系, テニオライト系の順に著しくなった. これら膨潤特性の相違は, 層間イオン種のほかに, 層間イオン量, 8面体層の相違に起因すると考えられる. 更に, これらの組成面の相違は, Na型固溶体の熱的安定性や結晶析出過程にも影響を及ぼしている.

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© The Ceramic Society of Japan
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