抄録
多様な発達環境、特に多様な家族の理解と子どもへのかかわりを検討するため、児童文化財であり教材としても活用される絵本の中から、非血縁の家族である養親子を描いた絵本を取り上げ分析した。登場人物には養子(主に幼児)と養親のほか、祖父母、実親、友達など周囲の人々が描かれた絵本もあった。主題は A.養子と養親の出会いと生活、B.真実告知にまつわる葛藤と乗り越え、C.養子を迎える子どもと新しい生活、D.養子に向けてのメッセージ、に分類され、描写の視点が整理された。養親子を描く絵本の読者層を広く想定し、多様な家族理解につなげる上で、これらの分析視点を用いて出産によらない親子の出会い、家族環境の相違への周囲の反応および実親の存在という特徴の描写に着目すること、同時に養育者の愛情や子どもによる自らの生い立ちへの肯定という、子どもの成長と家族を描く絵本のもち得る共通性とともに理解することの重要性を指摘した。