1995年の兵庫県南部地震では,多くのため池洪水吐が被災した.一般的に重量構造物である洪水吐は,地震時に大きな慣性力を受けることで破壊・変位を生ずることがその主因とされている.筆者らは,ジオグリッドを取り付けた耐震性を有する軽量洪水吐を提案し,振動台実験によりその有効性を明らかにしたが,メカニズムは未だ解明されていない.本研究では,地震時の地盤のせん断変形に着目し,提案工法に対して繰返し単純せん断試験を行った.アルミ棒積層体を用いた模型実験,および個別要素法(DEM)を用いた数値解析の双方から,その挙動メカニズムを検討した.実験および解析の結果から,洪水吐側壁に取り付けた補強材の引抜き抵抗により,洪水吐の変位が抑制されることが明らかになった.