抄録
北海道のような寒冷地では,剛な壁面材を用いた補強土壁だけでなく,鋼製枠とジオテキスタイルを用いた補強土壁でも,盛土材の凍上に伴う被害事例が報告されている.そこで,本研究では壁面材としてジオセルを活用し,これとジオグリッドを連結させた新しい補強土壁を試験的に構築し,鋼製枠を用いた補強土壁との比較も行いながら,これまで2シーズンに及ぶ温度・変形等の計測を行っている.また,計測結果を踏まえ,凍結領域内におけるジオグリッドの変形について検証するための室内模型試験も実施した.その結果,計測結果の比較検討から,この補強土壁が鋼製枠に比べて寒冷地に適した点を有することが確認された.また,室内模型試験から,低拘束圧域に敷設されたジオグリッドに関して,周辺土の凍結融解によって変形が部分的に集中して生じる可能性は低いということが分かった.