2023 年 38 巻 p. 91-97
2011年5月に上陸した台風2号により補強土壁が崩壊した.崩壊形態は補強材の破断を伴う内的破壊であった.崩壊発生の原因は,降雨時に盛土内の背面水位が上昇して,補強領域内部に過大な水圧が作用したため,補強材が破断して,安定性が低下したためであると推定されている.本研究では,この推定を数値解析的アプローチにより検証を行った.補強土壁背面盛土の崩壊前の含水状態を把握するため,二次元浸透流解析を実施して,崩壊前からの降雨履歴を作用させて,崩壊直前の盛土の背面水位を求めた.その後,安定解析により補強土壁の安全率を求めた.その結果,2011年5月の大雨により盛土の背面水位が上昇して,安定性が低下したことを数値解析的に明らかにした.