抄録
近年,地球温暖化による想定外の豪雨など,気候変動が原因で発生する土砂災害が年々増加し,人的・経済的な損失が拡大している.本論文では,山口県周南市徳山高専北側の土砂災害警戒区域において,現地観測の斜面に不織布フィルターを設置し,不織布フィルターを設置した区間と裸地区間で降雨量と体積含水率を測定した.その結果,降雨量と斜面崩壊の関係を明らかにした.さらに,坪郷らの提案した降雨浸透モデルを用いた数値解析を行ったところ,不織布フィルターを設置した場合,数値解の結果が観測値とよく一致することが確認できた.裸地区間では,崩壊前には数値解の結果が観測値と一致していたものの,崩壊後にはその一致性が低下する傾向が見られた.