ジオシンセティックス論文集
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遺跡に“古代の建設技術”を読む
特別史跡・水城を中心として
林 重徳
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2003 年 18 巻 p. 1-12

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抄録

福岡県太宰府市に現存する特別史跡“水城”は、高さ約10~14m、全長約1.20kmにも及ぶ大規模な盛土構造物であり、かつ千数百年を経過した土構造物として、施工された年を確定できる数少ない事例の一つである。この水城堤の築造には、大陸の影響を強く受けた様々な工夫と当時の建設技術が駆使されている。また、福岡県嘉穂郡桂川町に在る特別史跡“王塚古墳”の石室からは、精巧かつ鮮やかな装飾壁画が発見された。そこには、千数百年を経てもなお鮮やかな色彩の保存を可能にした石室内の環境を維持する巧妙な工夫が用いられている。しかし、当然ながら、いずれにおいても当時の設計・施工図および記録といった類いのものは一切無い。
これらの2つの特別史跡・遺構に関する多くの調査記録および試験結果等について、現代の地盤工学・建設技術の視点から、古代の建設技術と工夫を解釈し、当時の工事を指揮監督した設計者・指導者・の意図を推察する。また、水城の堤体から採取した不撹乱試料の土質試験の結果等より、盛土の土質特性に及ぼす年代効果について考察する。

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