抄録
1995年に施工された最大高さ約20m,基準のり面勾配が5分である急勾配補強盛土の11年経過後の安定性について報告する.当時の設計は,試行くさび法などの土圧論や円弧すべりを用いたジオテキスタイルマニュアルの設計方法が用いられ,すべり面の形状や安全率の違いにより,補強材の配置や経済性が異なった.この盛土工事では,土圧論を用いた設計方法とジオテキスタイルマニュアルの設計方法を併用し,盛土材の土質定数の設定に工夫を行うことで経済的な配置を決定している.本論文では,今回用いた有限要素解析の信頼性を動態観測の結果を比較して確認するとともに,当盛土の長期安定性について検証を行った.また,有限要素解析結果と円弧すべりを用いた極限平衡法の結果の比較により盛土材の土質定数の設定について検証するとともに,今後の補強盛土の設計についての提案を行う.