西洋古典学研究
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アリストパネース喜劇における変装の意義
戸部 順一
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1984 年 32 巻 p. 28-40

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抄録

アリストパネースの喜劇には,登場人物が衣装を取り替える場面がある.特に窮地を逃れようとする時,あるいは何かの策略に就こうとする時変装の所作が用意されている.なかでも, Ach.とTh.には,主人公が悲劇詩人の所へと赴き,衣装を借りて変装を図るといったmotifが等しくみられ,この両場面においては,単に自己の正体を隠そうとして悲劇の衣装に着替えるのではなく,新たに纏う衣装に,目的達成を容易にする仕組みが隠されているからとも思われる.本稿は, Ach.において主人公ディカイオポリスがテーレポスの衣装を纏う経緯の観察を通じて,彼が悲劇衣装を利用する意義を明らかにすることから始まり,次に, Ach.の変装場面の観察を考慮に置き,しばしばTh.の変装場面に指摘されるアリストパネースの悲劇批判が,どのように為されているのかを考察するものである.

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