脳神経外科ジャーナル
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先天性肝線維症に合併した多発性脳動脈瘤の1例
伊藤 進山下 俊紀佐藤 正純枚田 一広佐藤 啓治
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1992 年 1 巻 2 号 p. 162-166

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抄録

先天性肝線維症はGlisson鞘の線維性拡大と小葉間胆管の拡張,増生をきたす疾患で,腎に嚢胞性病変を伴うとされているが,脳動脈瘤を合併した報告はきわめて少ない.今回われわれはくも膜下出血を併発した1例を経験した.症例は,24歳女性.19歳,妊娠39週1日に脾動脈瘤破裂のため帝王切開の既往があり,術中の肝生検から先天性肝線維症と診断されていた.高血圧の既往はない.右中大脳動脈分岐部に嚢状動脈瘤を確認し,発症当日にclipping術を行った.また,左中大脳動脈分岐部にも嚢状動脈瘤を認め,後日clipping術を加えた.画像診断上,腎臓は常染色体劣性多嚢胞腎に合致する所見であった.本疾患と脳動脈瘤の合併が必然的と断定するには早計であるが,系統的な動脈壁の脆弱性も考慮され,今後さらに検討を要すると考えられる.

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© 1992 日本脳神経外科コングレス
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