てんかん外科では的確な焦点診断が重要である. 発作症状と非侵襲的検査だけでは十分に焦点の局在や切除範囲が決定できない場合や機能マッピングが必要な場合には, 頭蓋内脳波が用いられる. Stereo-electroencephalography (SEEG) は定位的に脳内に挿入した棒状電極の全長にわたり脳波を記録する方法である. 焦点が脳深部や複数箇所に想定される例, 両側の評価が必要な例や再手術など, 硬膜下電極では手術適応になり難かった症例にも適用できる. その活用でてんかん外科の適応が広まると期待される. 本稿ではSEEGについて, その適応, 焦点診断に重要な仮説設定, 電極の留置方法, 判読, アウトカムを硬膜下電極との比較を含めて, 総論的に解説する.
多くの新規抗てんかん薬が承認されたが, 薬剤抵抗性てんかんの発生率は大きく変わらず, 今後もてんかん外科の必要性に変化はないと思われる. 焦点切除術はてんかんの治癒を目指せるが, その適応となる症例は限られている. 焦点切除術の適応とならない症例には迷走神経刺激療法 (VNS) が緩和術として適応となるが, その効果はきわめて限定的である. 米国ではより精度の高い緩和術として脳深部刺激療法 (DBS), responsive neurostimulation (RNS) などの新規神経調節治療が導入されている. てんかん外科は焦点切除困難症例や術後発作残存症例に対する治療オプションが必要であり, 国内への新規治療導入が望まれる.
近年, 運動異常症に対する治療法は, 脳深部刺激療法 (deep brain stimulation : DBS) と凝固術がともに進歩・発展している. 2020年末に本邦においてadaptive DBS (aDBS) が臨床応用されるようになった. aDBSは, 電極周囲のフィールド電位をリアルタイムにフィードバックし, 刺激強度を変化させる画期的な治療技術である. 一方, 凝固術の新技術として集束超音波治療 (focused ultrasound : FUS) が登場したが, 従来の高周波凝固術も再評価されつつある. 特にこれまで避けるべきとされてきた両側凝固術についても一定の評価がなされつつある. 不随意運動・パーキンソン病に対するDBSと凝固術について, 新技術・新知見の理解を踏まえて, 今後の課題について検討する.
ExAblate Neuro 4000®は, 約1,000本の超音波ビームを凝固部位と温度をリアルタイムにモニターしながら標的に集束し, 切らずに脳の病気を治療できる画期的な装置である. 精度の高い凝固手術ができるが, 頭蓋骨の性状 (SDR) と標的の位置に影響される. 本態性振戦では, 凝固温度55℃以上で高い効果が得られ, 両側凝固手術も期待できる. パーキンソン病のジスキネジアに淡蒼球手術が有効であるが, 手術標的には議論がある. 脳腫瘍, 脳卒中, 強迫神経症, 過誤腫などにも臨床応用され, さらに血液脳関門の可逆的開放が可能で, マイクロバブルとの組み合わせにより神経難病治療のブレークスルーとなることが期待されている.
微小脳血管減圧術を施行したが再発, あるいは未治癒の突発性三叉神経痛でカルバマゼピン非耐性の5症例に対して, 再手術の際に三叉神経知覚枝のnerve combingを施行した. 全例術直後からカルバマゼピン内服なく疼痛発作が完全消失したが, 5例中4例 (80%) に三叉神経第3枝領域を中心とした顔面知覚障害が残存した. 術後1~5年の時点で再発を認めずQOLも良好である. 再発三叉神経痛で責任血管が明らかでなく, かつカルバマゼピン非耐性例に対してはnerve combing法は有効な治療法と思われる. なお, nerve combing法を予定する場合は術前に顔面知覚障害をきたす可能性が高いことを説明すべきである.
非出血性の解離性椎骨動脈瘤の自然歴は良好であるが, まれに破裂に至る症例があることも知られている. 今回, 後頚部痛で発症し, 経過観察中の短期間で増大をきたした非出血性の解離性椎骨動脈瘤を経験した. 解離部およびその近傍から穿通枝および前脊髄動脈の分岐が確認され, 治療介入に際し虚血性合併症が大きく危惧される症例であった. 母血管にフローダイバーターステント (flow diverter : FD) 留置を施行したところ, 虚血性合併症をきたすことなく経過し, 治療3カ月で解離性動脈瘤の閉塞が確認された. 急速に増大する解離性椎骨動脈瘤に対し, 穿通枝温存を可能とする治療としてFD留置は有効な選択肢の1つであると考えられた.