脳神経外科ジャーナル
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最新号
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特集 悪性脳腫瘍
  • 柴原 一陽, 隈部 俊宏
    2025 年34 巻1 号 p. 4-10
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     Lower grade glioma (LrGG) はIDH変異型1p/19q共欠失を伴う乏突起膠腫と, IDH変異型1p/19q共欠失を伴わない星細胞腫を含む腫瘍群である. LrGGは長期生存が期待できる腫瘍であるため, 放射線治療を含む術後の治療方針は現在過渡期にある. 本稿では, LrGGに対する術後療法の現状と今後の展望について解説する.

  • 田中 一寛, 長嶋 宏明, 篠山 隆司
    2025 年34 巻1 号 p. 11-17
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     神経膠腫はWHO2021改訂によって分子遺伝学的情報が診断・分類に明確に反映されるようになった. 特に, IDH野生型のglioblastoma (GBM), ヒストンH3遺伝子変異型のdiffuse midline glioma (DMG) はいまだ予後不良な悪性神経膠腫である. 悪性神経膠腫の集学的治療は手術, 放射線療法, 化学療法の3つを柱にしているが, その限定的な効果を克服するために新たな局面を迎えている. 最近では, テント上初発GBMに対する造影範囲を超えたFLAIR高信号領域切除の有効性が検討されている. また, 光線力学療法, 樹状細胞ワクチンや自家腫瘍ワクチンを用いた免疫療法の治療成績も期待される. DMGに対してはドーパミンD2受容体拮抗薬 (ONC201) の効果が示された. さらに, 遺伝子パネル診断によって, 免疫チェックポイント阻害薬やNTRK阻害薬, BRAF/MEK阻害薬の有効性が示された. これらの保険適応によって患者個人に応じたprecision medicineも少しずつ前進している.

  • 大岡 史治, 齋藤 竜太
    2025 年34 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     中枢神経系悪性リンパ腫 (PCNSL) ではMYD88遺伝子変異やCD79B遺伝子変異が高頻度に認められることが明らかになった. これらの分子異常はPCNSLの診断マーカーとして, また有望な新規治療標的として注目されている. 診断においてはPCNSLでは血液や髄液中の腫瘍細胞由来DNAから遺伝子異常を高頻度に同定できることが明らかになり, 低侵襲なリキッドバイオプシーの確立も期待されている. PCNSLの治療は, 本邦ではR-MPV療法が寛解導入療法として広く普及し治療成績の改善に貢献している. 今後はR-MPV治療後の地固め療法における放射線治療の減量・回避が大きな課題であり, 新規治療戦略の1つとして自家移植併用大量化学療法の導入も検討されつつある. また, PCNSLにおいて重要な分子の1つであるブルトン型チロシンキナーゼ (BTK) に対する阻害薬のチラブルチニブが2020年に世界に先駆けて本邦で再発・難治PCNSLに対して使用可能となり, 今後長期成績などの有効性が明らかになることが期待される.

  • 中原 由紀子, 阿部 竜也
    2025 年34 巻1 号 p. 27-34
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     がんに対する全身薬物療法が進歩し, がん患者の生存期間が延長したことで, 転移性脳腫瘍の罹患率は増加している. 転移性脳腫瘍はがん患者の生活の質を低下させる要因であり, がん種ごとの生物学的特徴や患者の全身状態・背景も踏まえて治療を決定する必要がある. 転移性脳腫瘍に対する手術適応は, 従来の転移数や大きさによる判断から神経症状を軽減可能であるかどうかによる判断に変化した. また従来標準治療とされていた全脳照射も定位的照射に移行している. 各患者の治療戦略は, 脳神経外科医, 腫瘍内科医, 放射線腫瘍医が協議すべきであり, 脳神経外科医として手術を含めた治療戦略を提案・実施することは, 転移性脳腫瘍患者に対する集学的治療の質を高めるために不可欠である.

  • 髙見 浩数
    2025 年34 巻1 号 p. 35-44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     中枢神経胚細胞腫は小児脳腫瘍の中で2番目に多い腫瘍型であり, 水頭症を発症することが多いことから脳神経外科医であれば遭遇することが想定される疾患である. 初期のマネジメントから診断, 治療, 長期フォローアップの流れは確立されており, 診療ガイドラインも策定されている. 長期生存が得られやすい疾患ではあるが, 治療の主体は放射線治療と化学療法であり, 小児から若年成人に発症するため, 長期的には二次がんや高次脳機能障害などの合併症リスクを背負う疾患である. 生物学的解析が進んできており, ゲノム異常や遺伝学的素因も解明されてきている. 胚細胞腫の日常臨床と国内の臨床試験, 海外での治療の取り組み, 病態の正体に迫る生物学的解明について記した.

温故創新
原著
  • 長堀 貴, 高橋 敏行, 百武 佑理, 兼松 龍, 井上 智夫, 南 学, 花北 順哉
    2025 年34 巻1 号 p. 48-54
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     腰椎椎間孔狭窄の中でも, L5/S1椎間孔狭窄は頻度が高いものではあるが, その画像診断はしばしば困難である. L5/S1椎間孔狭窄に対する外科治療の選択肢は肉眼的手術, 顕微鏡下手術や内視鏡下手術などあるが, 手術適応は施設によってさまざまであり一定の基準はない. 当院の顕微鏡下手術と内視鏡下手術の治療成績を比較すると, 内視鏡下手術は手術侵襲が少なく患者負担の少ない治療であり, 両者は同等の臨床症状の改善を示した. また, 両者において手術前後の脊椎アライメントへの影響も差はなかった. L5/S1椎間孔狭窄に対する内視鏡下手術は良好な治療成績を達成できる低侵襲な治療であり, さらなる発展が期待される.

症例報告
  • 切石 唯菜, 長坂 昌平, 武田 康, 山本 淳考
    2025 年34 巻1 号 p. 55-60
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル オープンアクセス

     特発性側頭骨髄液漏は外科的治療が必要となる一方, 術前に漏出点が同定困難なことや複数流出路を有することがあり治療に難渋する. 症例は43歳男性. 5年前から鼻漏と右伝音性難聴を認めた. 術前に特発性右側頭骨髄液漏と診断し, 3D-CTで右内耳道近傍の錐体骨の溶骨性変化を認めるも漏出点の同定は困難だった. 手術は経中頭蓋窩到達法に錐体骨削除を加えることで溶骨性変化を呈する部位を広範囲に確認し, 頭蓋底再建では遊離修復材の小片を切削した錐体骨内を多層性に充塡し髄液が漏出しないようにすることで, 症状の改善が得られた. 特発性側頭骨髄液漏で漏出経路が術前に不明な際には, 術中に確実に漏出部位が同定できる手術アプローチの選択と, 確実な頭蓋底再建を行うことが重要である.

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