抄録
今回,破裂前下小脳動脈-内耳動脈分岐部動脈瘤の1例を経験したので,過去の破裂前下小脳動脈末梢部動脈瘤35例の結果も踏まえて顔面・聴神経の温存について考察する.症例は72歳の女性で,クモ膜下出血にて発症し,MRIで内耳孔に陥入した動脈瘤を疑い,血管撮影で右前下小脳動脈 meatal loopに嚢状動脈瘤を認めた,右後頭下開頭で手術を行い,顔面・聴神経の間に動脈瘤を認めた.聴神経の剥離は困難なため,内耳動脈とともに犠牲にし,顔面神経を温存し,クリッピングを行った.前下小脳動脈-内耳動脈分岐部動脈瘤に対する手術では,術前より聴力障害を認め,術中聴神経温存が不可能な場合は,動脈瘤の処置と顔面神経の温存を優先すべきである.