抄録
41歳の男性で,頭位を左回旋時にC5/6椎間で左椎骨動脈が圧迫,狭窄を受け,脳虚血症状をきたした症例を経験した.既往歴としてKlippel-Feil症候群(C2/3fusion)とC6/7椎間板ヘルニアによる前方固定術があった.頸椎X線では上記所見に加え,C4/5の不安定性およびC5/6左側椎間孔に骨棘の形成があり,MRIおよびMRAでは,頭位左回旋時に左椎骨動脈が偏位して狭窄が生じ,同時に右椎骨動脈も全体的に狭小化し,flowの低下が疑われた,椎骨動脈撮影では,蛇行,狭窄に加え,両側椎骨動脈の血流の遅滞がみられた.治療は,前方アプローチでC5/6の骨棘,椎間板を除去し,腸骨を用いて前方固定術を行い,症状の消失を得た.本例の臨床症状の発生機序および治療方針について考察を加えた.