抄録
症例は58歳の男性で,他院にて頭蓋咽頭腫に対し,約20年間で2回の開頭腫瘍摘出術を施行された既往がある,今回は両耳側半盲,近時記憶障害を主訴に当科受診し,腫瘍の再発と診断し,3回目の開頭術を施行した,術後神経症状の悪化はなく,早期より歩行可能であったが,中枢性塩分喪失症候群および中枢性尿崩症による多尿のため慢性的脱水となり,深部静脈血栓症,肺血栓塞栓症および非閉塞性腸管膜虚血症をきたした,本症例ではいずれも適切な早期診断・早期治療により治癒せしめることができたが,治療時期を逸すると死亡率が高い重篤な合併症であり,特にこれらの危険因子が存在する患者に対しては,常に念頭において周術期管理にあたる必要がある.