2005 年 14 巻 9 号 p. 571-575
慢性硬膜下血腫に対して穿頭洗浄ドレナージ術中にクモ膜下出血が突発した症例を経験した.症例は68歳男性, 高血圧と脳動脈硬化症の治療中であったが, 右不全片麻痺を主訴に来院し, CT上典型的な慢性硬膜下血腫を認め手術を施行した.血腫除去・洗浄中, 突然, 不穏状態に陥り, CT施行したところクモ膜下出血を認めた.クモ膜下出血は, カテーテルが血腫内膜とクモ膜を穿通したことと, 血腫内容の急激な排除と洗浄のために天幕上下の頭蓋内圧の変化や組織の歪みが出現して, 天幕周辺の小血管を損傷したことが原因で発生したものと推定できた.慢性硬膜下血腫に対する穿頭洗浄ドレナージ術の合併症としての頭蓋内出血に, クモ膜下出血が単独に発生することを経験し, 新たに合併症として加えるべきと考え, そのクモ膜下出血の発生機序と, その対策について考察した.