抄録
小児脊髄脂肪腫の手術目的は,脊髄係留の解除および脂肪腫の可及的切除にある.下肢運動・排尿機能温存のために,術中神経生理学的手技は不可欠である.神経機能監視(モニタリング)と神経局在同定(マッピング)を組み合わせることが重要となるが,前者としては脊髄レベルでの排尿反射の全経路を監視できる球海綿体反射のモニタリングが,後者としては従来の神経刺激および陰部神経同定を状況に応じて施行する.手術では,脂肪腫頭側端で硬膜を切開し,正常脊髄を確認する.脂肪腫の硬膜からの剥離を容易な側で尾側まで行い,切離困難側は頭尾側両方から剥離する,必要に応じて神経マッピングを操作中に繰り返す.脊髄係留解除後に脂肪腫の可及的減圧を行う.この間,球海綿体反射を持続的にモニタリングし,変動が生じた場合は手術操作を中止あるいは変更する.球海綿体反射に大きな変化がなかった場合の排尿機能温存の可能性はきわめて高く,これからの腰仙部病変手術に欠かせない術中神経生理学的手技となっていくと思われる.