脳神経外科ジャーナル
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発生初期にクモ膜嚢胞と診断された嚢胞性髄膜腫の1例
吉本 祐介佐々田 晋進藤 徳久西口 充久日下 昇荻原 浩太郎西浦 司高田 理恵
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2010 年 19 巻 12 号 p. 931-937

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抄録

今回われわれは,発生初期にクモ膜嚢胞に酷似した単純CT像を呈した嚢胞性髄膜腫が,その後8年の経過で巨大な多房性腫瘍周辺嚢胞を伴う腫瘍へと増大する過程を捉えた1例を報告した.初診時の単純CTでは左前頭葉の脳表に三日月型の低吸収域を認め,クモ膜嚢胞と診断された.その後8年間で腫瘍は徐々に増大し,術前の造影MRIで腫瘍は直径約3cmのリング状の嚢胞部分とその内部に硬膜に基部をもつ約1cmの実質部分から成り,共にガドリニウムで造影された.また腫瘍周辺にはガドリニウムで増強効果を認めない壁によって分画された大きな多房性の嚢胞を認めた.腫瘍本体の病理所見はmicrocystic meningiomaで,腫瘍周辺嚢胞の嚢胞壁は変性したクモ膜より形成されていた.本例が示唆するように嚢胞性髄膜腫が,その発生初期段階でクモ膜嚢胞に酷似した単純CT所見を呈する場合があり,まれな疾患ではあるがクモ膜嚢胞の鑑別診断として本疾患も念頭に置いて画像診断をする必要があり,その鑑別には造影MRIが有用と思われた.

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© 2010 日本脳神経外科コングレス
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