抄録
小児重症頭部外傷に対する診療は,発達段階にある中枢神経組織の解剖学的,生理学的特徴を踏まえて行うことが大切である.特に病院搬入前の呼吸・循環の状態が患児の予後に強く影響するため,受傷現場からの救急初期治療の意義は大きい.このため標準的手法を掲載したガイドラインは,治療の質の向上や医療者の教育における有用性に期待をもたれている.成人頭部外傷に比較して比較的頻度が少なく,臨床研究結果のエビデンスレベルが十分ではない場合もあるが,外傷の精神神経学的影響など,高次脳機能や画像診断法をはじめとした課題について今後も検討される必要があろう.