抄録
未破裂脳動脈瘤は,破裂例と異なり治療の時期,方法,施設と術者の選択の幅が大きく,また切迫破裂ないしmass effectを呈する多くは,大型の症候性未破裂動脈瘤と,脳ドックなどで偶然発見された小型の無症候性未破裂動脈瘤との間で対応に差が生じるのは明らかで,後者に「許容されうる」合併症の余地は皆無に近い.一定の手術経験者が小型の未破裂動脈瘤手術を行った際に問題となる合併症は主に穿通枝閉塞,脳神経障害であり,ガイドラインに基づいた症例選択,術者や施設の経験の蓄積とおよび内視鏡,術中蛍光血管撮影,モニタリングの進歩などによる確認水準の向上により,これら合併症の多くは克服可能となった.自経例や最近の報告では,手術morbidityは数%,死亡率はほぼゼロである.この治療水準は,完全な動脈瘤頚部閉塞よりも合併症回避を優先させる判断に基づいたものであり,その理念は小型の無症候性未破裂脳動脈瘤においてはコンセンサスを得ているものと考えられる.